三菱UFJ銀行など強制調査 未公開情報伝達か 証券取引等監視委

 三菱UFJ銀行の取引先に関する未公開情報が外部に漏れ、不正な株取引が行われた疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が5月、三菱UFJ銀行の本社(東京都千代田区)などに金融商品取引法違反(情報伝達)容疑で強制調査に入ったことが分かった。

 監視委は、株取引にかかわった関係者について、東京地検への告発を視野に調べている。

 関係者によると、外部に漏れたのは、三菱UFJ銀の取引先企業が、株式公開買い付け(TOB)を行うという未公表の情報。これが同行に勤務する男性行員を通じて、複数回にわたって、行員の親族や親族の取引先などに伝わった。親族らはTOB公表前に、この企業の株を購入したという。

 株価はTOB公表後に上昇しており、行員の親族らは一連の株取引で計数百万円の利益を得たとみられる。一方、行員は利益を得ていないとみられ、監視委の調べに「親族らの株取引は知らなかった」などと説明しているという。

 監視委は5月、この行員が出向していた三菱UFJモルガン・スタンレー証券のほか、行員や親族の自宅なども捜索した。

 金融商品取引法は、上場企業の幹部や社員などが職務に関して知った未公開の重要事実を、他人に利益を得させたり損失を回避させたりする目的で伝える「情報伝達行為」を禁じている。違反した場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科せられる。

 三菱UFJ銀は朝日新聞の取材に「嫌疑が事実であれば誠に遺憾。監視委の調査に全面的に協力する」としている。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券は、顧客の非公開情報を同意なしに共有した問題などをめぐり、金融庁から業務改善命令を6月に受けている。