特定小型原付き新設から1年 進まぬルール理解、目立つ交通違反

松本敏博
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 一定の基準を満たせば運転免許不要で走行できる「特定小型原動機付き自転車(特定小型原付き)」が新設されて1日で1年が経過した。最高時速6キロ以下などであれば歩道も走行可能だが、こうしたルールの理解不足とみられる交通違反も目立っている。

 特定小型原付きは、電動機で最高時速が20キロ以下、車体が長さ190センチ・幅60センチ以下で、走行中に最高速度の変更不可といった基準がある。キックボード型やバイク型があり、自賠責保険への加入が必要だが、基準を満たしていれば、16歳以上が最高時速20キロモードで車道、同6キロモードで歩道を走行できる。一方で、それ以上の速度が出る電動キックボードなどは運転免許も必要となる。

 特定小型原付きはレンタルもあり、利用者が拡大する一方で、人身事故や交通違反も発生している。愛知県内では特定小型原付きが絡む人身事故が昨年7月から今年5月末までに5件、交通違反は63件あった。違反の内訳は、20キロモードなのに歩道を走行する「通行区分違反(歩道通行)」が47件と7割以上を占めた。三重でも同じ違反が1件発生している。

 法令では、20キロモードでは車道の左側や自転車レーンを走行し、6キロモードでは速度表示の緑色のランプを20キロの点灯から点滅へ変更することが義務付けられている。走行場所に応じて、従う信号や標識が変わることもある。愛知県警交通総務課の担当者は「利用者が歩道を走れる要件を知らずに運転していることが違反の原因」と分析する。

 愛知、岐阜、三重県警はホームページ(HP)でこれらの基準やルールを掲載。また愛知県警は県内の大学や商業施設で体験型イベントの開催などで周知に取り組む。

 名古屋や東京、大阪など10都市で特定小型原付きのレンタルサービスを展開している「Luup」(東京都)もHPに交通ルールを掲載。さらに11問のテストに全問正解しなければ貸し出ししないなど対策をとる。担当者は「自治体や警察と連携して講習会を開催し、啓発活動を続けたい」と話した。

 愛知県警は「便利に使うためには、利用者のルールや安全意識の向上が不可欠。さらなる周知を進めていく」としている。

     ◇

 記者は5月、愛知県警が名古屋市内で開いた乗車体験会で初めて「特定小型原付き」に乗った。

 電動キックボード型のハンドルを握り、地面を蹴る。右手ハンドルのアクセルレバーを押すと加速した。

 この日は6キロモードの試乗のみ。はじめは左右のバランスがとりにくく、つい手元に気をとられてしまう。操作が難しくないとはいえ、運転にはコツが必要だ。20メートルほどのコースを2往復すると、ようやく周りを確認する余裕が出てきた。地面を滑るような感覚が心地よく感じた。

 販売している商品をインターネットでみると、1回の充電で30~60キロメートル走行できるモデルもあり、移動手段として免許不要で手軽に乗れる魅力は大きい。ただ登場からまだ1年。利用に不可欠な基準やルールは浸透しているのだろうか。

 街で見かけると、20キロモードで車道を走行する特定小型原付きは思ったより速いと感じる。名古屋市内では交差点で特定小型原付きが左折する車に巻き込まれる事故も起きている。

 違反防止と共に事故防止に向けて、利用者側だけでなく、同じ道を走る車やバイク、自転車側も特定小型原付きのルールや特性を知り、注意を払う必要があると思う。

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