手厚い少子化対策も住宅費高騰、若者集中と進む老い 首都の8年問う

東京都知事選2024東京の政治

小川聡仁 寺島笑花

 首都のトップを選ぶ選挙戦が20日、始まった。焦点の一つは、2期8年の小池都政への評価だ。東京はこの間にどう変わり、私たちの暮らしにどんな影響を与えたのか。8年前と直近の数字から変化をたどり、有権者の思いを聞いた。

「合計特殊出生率」は1.24から0.99に急落

 小池都政が注力してきたのが、0~18歳の全ての子どもへの月額5千円の支給や第2子の保育料無償化などの子育て支援策だ。ただ、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は8年前の1.24(2016年)から昨年、過去最低の0.99に下がった。

 「そりゃ、1を切るわな」

 文京区の会社員男性(37)は、そう嘆息する。共働きで3歳の子どもを育てるが、子育てにかかるコストの大きさを痛感しているからだ。

 近所では、幼少期から小学校受験に向けた塾に通わせる親が少なくない。中学受験や習い事をはじめ「子どもがやりたいと思ったことをさせてあげたい」と考えると、子どもをもう1人持つことに不安を感じる。「今の支援でもありがたいけど、十分ではないと感じる。共感できる子育て支援策を掲げる候補者を見極めたい」

23区の新築マンション価格は6千万円台から1億円超に

 いずれ結婚して子どもが欲しいという新宿区に住む医師の女性(37)は「東京は治安もよく、決して悪い都市ではない。都民の所得が増え、子どもを育てやすくなる施策を望んでいる」と語る。

 都内では住宅費の高騰も著しい。不動産経済研究所(本社・新宿区)によると、8年前の16年5月に6千万円台だった「東京23区の新築マンション1戸あたりの平均価格」は今年5月時点で1億円を超えた。

 ベビーカーを押しながら候補者の演説を聞いていた中央区の会社員女性(34)は育休中。「今後も東京の中心部に住み続けられるのか、悩んでいます」。子育て施策が充実しても「都内の住宅費の負担感は大きすぎる」と漏らす。今後については「もっと働きやすく、住みやすい東京になってほしい」と話した。

都内の20代は16万人増の180万人に

 東村山市の会社員男性(28)は通勤のしやすさから、都心への移住を検討しているが、「とてもじゃないけど現実的に無理」と嘆く。夫婦2人暮らしだが、円安が進み、物価が高騰する中で生活は苦しくなる一方だ。「東京でこれからも長く暮らしていけるか不安。将来の生活を想像できる東京を描いてくれる候補者に一票を投じたい」

 この8年間で「東京一極集中」はさらに進み、20代の都内への流入が目立つ。東京都によると、20代の若者は都内に180万人(24年)いるが、16年から約16万人も増えた。

 品川区の会社員男性(26)は大学入学を機に福島県から上京。地元での就職先は公務員や銀行などに限られると感じ、就職先に東京を選んだ。「地元は元気がなくなるばかりで。いずれは地元に戻ろうという思いがあったが、今は薄れつつある」

2035年には都民の4人に1人が65歳以上に

 首都の政策は全国に波及していく影響力があると思う。だからこそ、「東京だけではなく日本全体を考えてくれる人、地方を活性化させてくれそうな人に投票したい」。

 一方で「老い」も着々と進む。35年には都民の約4人に1人が65歳以上になるとの推計もある。

 東京都の中央に位置する日野市に住む滝本光男さん(87)は「元気なのは都心の一部だけ。空き家も増える一方でまちがどうなっていくのか、先が見えない」と話す。

 自治会の約100世帯はほとんどが高齢の夫婦か単身者。地区の子ども会は10人ほどしかいない。「まちも人も必ず老いる。高齢化が進んだ先の政策を考えてほしい」が、投票先はまだ決めていない。(小川聡仁、寺島笑花)

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小川聡仁
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