歴史を糧に、未来へのよりどころに 公文書館、外交史料館が担う重責
編集委員・藤田直央
現場へ! 「公的な私文書」を生かす⑤完
沖縄返還時の核密約関連文書は、究極の「公的な私文書」といえる。1969年に佐藤栄作首相とニクソン米大統領が会談し、沖縄返還後の緊急時の核再持ち込みに関する文書を交わした。ただ日本政府は、この密約は首相密使が交渉し、政府内で引き継がれなかったとして、関知せずとの立場を取り続ける。
京都産業大学教授だった時に首相密使を務めた故・若泉敬氏が、文書を残している。
過去を告白した著書(94年、文芸春秋)の編集者、東眞史氏に預けた段ボール1箱分には、キッシンジャー米大統領補佐官との極秘交渉に関するメモが含まれる。東氏が亡くなった翌2018年に遺族から国立公文書館に渡った。当時の加藤丈夫館長が高校の後輩にあたる東氏に寄贈を働きかけていた縁だ。
受け入れれば閲覧まで原則1…
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- 【視点】
一般に政治家や官僚は、3重の検証をくぐる。かつて英国に3年滞在した際、最も羨ましかったのは、その3重の検証がきちんと作動していたことだ。 第1は、批判ジャーナリズムである。これは、現場から現状と問題点を同時代的に伝える。ときに画一的な報
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