大使館はなぜ「不可侵」なのか 中東の攻撃応酬では新しい考え方も

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聞き手・村上友里
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 4月、イスラエルによるとされる在シリアのイラン大使館への空爆や、エクアドル当局によるメキシコ大使館への突入などが国際的に波紋を呼びました。大使館や領事館といった在外公館は、国際条約で「不可侵」と定められている特別な施設だからです。それぞれの事件はどんな意味を持つのか。東京都立大の新倉圭一郎教授(国際法)に聞きました。

 ――大使館や領事館はどのような条約で保護されているのですか。

 外交活動のために使用される大使館は、一般に「ウィーン条約」と呼ばれる、1961年採択の外交関係条約(外交関係に関するウィーン条約)で「使節団の公館は不可侵とする」と定められています。外交使節、在外公館を受け入れる国のことを「接受国(せつじゅこく)」と言いますが、接受国の官吏は公館側の同意なしに立ち入ることはできないこと、接受国には公館の安全を保護するために適当なすべての措置をとる特別な責務があることも規定されています。

 行政サービスや自国民の保護といった役割がある領事館は、63年採択の領事関係条約(領事関係に関するウィーン条約)で不可侵と定められています。領事館には、火災などの場合には公館側の同意があったとみなされるという例外規定があります。

 外国の公館の不可侵は接受国が負う絶対的な義務とされているのです。

大使館や外交官の保護は平和に直結

 ――不可侵だとする理由を教えてください。

 在外公館に不可侵性や特権が認められる理由について大きく三つの考え方があります。

 一つ目は、在外公館は接受国…

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