「南海トラフ地震だ!」跳び起きた住民、実際の大揺れで見えた課題も

有料記事

川村貴大 羽賀和紀 原篤司 神谷毅
[PR]

 最大震度6弱を愛媛と高知両県で観測した17日の地震は、南海トラフ地震の想定震源域で夜に起きた。巨大地震への備えは生かされたのか。

 「絶対に南海トラフ地震だ」。愛媛県宇和島市の元自治会長、近藤浩一さん(59)は17日夜、突き上げるような激しい揺れにそう感じた。

 自宅は北灘湾に注ぐ岩松川の河口に近く、南海トラフ地震で最大7・5メートルの津波が想定されている。テレビで津波の恐れはないと知ったが、数人の住民が外に出てきていた。

 でも不安はなかった。自治会では夜間の避難訓練を先月末に実施したばかりだったからだ。訓練には86歳の母も参加し、高台にある避難場所に徒歩で5分ほどで到着した。

 ただ、実際に地震に遭遇し、課題も見えた。自治会に入る23世帯のほとんどは60~70代。訓練に参加していない人もいて、自力で避難場所まで登れない人がいたら、「誰が運び上げるのか」。避難路は幅が約2メートルと狭く、住宅が崩れたら通れなくなる恐れもあると感じた。

 震度6弱を観測した高知県宿毛市。宮本清香さん(73)の自宅は宿毛湾に近く、発災後8分ほどで10~20メートルの津波が来るとされる。南海トラフ地震への危機感は強く、官民を挙げて津波への警戒を強めてきた。家の近くには、地元の中学生が「防災を日々の習慣に」と描いたポスターが貼られている。

 「万が一」を考えて、妻(68)と2人で2・5キロほど先の高台の市役所へ車で避難した。昼間なら裏山に逃げるつもりだったが、夜中に山の階段を上るのは不安だった。 宿毛市は2022年4月、南海トラフ地震の津波を想定して、標高20メートルの高台に庁舎を新築した。80台の駐車場や周辺に空きスペースもあるが、「あっという間に避難した市民でいっぱいになった」(市危機管理課)という。

 宮本さん夫妻も3時間ほど身を寄せた。トイレや自動販売機のほか、携帯電話を充電できる電源もある。「余震があっても市役所の職員が声をかけてくれて安心だった」と振り返った。

 市は17日午後11時半に災害対策本部会議を開き、避難所の設置を決定。その1時間後には市内10カ所の避難所に職員を2人ずつ配置した。配置を指揮した朝比奈淳司・税務課長は「ここでは常に地震のことを考えているので、管理職になる前から柔軟に対応できるようになった」という。

 22年1月に宮崎県沖の日向…

この記事は有料記事です。残り1365文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら