「大東亜戦争」ツイート騒動、総括できない日本を象徴 広中一成さん

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聞き手・上地一姫
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 陸上自衛隊の第32普通科連隊さいたま市)が、X(旧ツイッター)の部隊公式アカウントで硫黄島(東京)の戦没者追悼式を紹介する投稿に「大東亜戦争」という用語を使い、その後削除して投稿をやり直すという騒動がありました。なぜ「大東亜戦争」という言葉を使うことが物議を醸すのか。歴史学者の広中一成・愛知学院大学准教授に論点を聞きました。

 ――政府は、「一般に政府として公文書に使用していないことを踏まえた」として投稿を修正しました。「大東亜戦争」という用語は問題用語なのでしょうか。

 「大東亜戦争」という単語を使ってはいけないわけではありません。ただ、歴史を押さえて使うことが大切です。

 今回は、この言葉が持つ歴史認識の問題に留意せず、自衛隊内部で一部の人が使っている単語が表に出て、世間との「常識」のずれが表面化した。そういう騒動だったと見ています。

「大東亜戦争」の実像とは

 ――「歴史を押さえる」とは、どういうことでしょうか。

 戦前の日本は、戦争の拡大に伴い様々なスローガンを掲げました。1937年に日中戦争が始まると、横暴な中国をこらしめるという意味の「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」がうたわれ、40年の仏領インドシナ進駐にあたっては、日本の侵略を正当化する標語として使われた「八紘一宇(はっこういちう)」とともに「大東亜新秩序の建設」を含んだ基本国策要綱を決めます。

  そして、41年12月に米英と開戦すると、この一連の戦争を「大東亜戦争」と呼ぶことを閣議決定し、アジアから欧米の植民地主義を排して日本を盟主とする「大東亜共栄圏」を打ち立てる、と宣言しました。

 つまり大東亜戦争とは、当時の日本が自らの立場を主張するために作った用語とも言えます。だから、今の時代に「大東亜戦争」をあえて使うことは、当時の日本の立場を正当化している、とも捉えられるのです。

 ――戦争によって「日本がアジアの植民地を解放した」と評価する意見もあります。

 日本は、アジアの植民地解放…

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