ベストセラー「昆虫はすごい」筆者語る 足元で見つけた未踏の調査地

有料記事

小川裕介

 幼少期は追いかけても、大人になると離れがちな昆虫。近年は多様な切り口の書籍が出され、女性らにも人気が広がる。いまなぜ「昆虫が熱い」のか。世界を飛び回って新種の発見を続けながら、SNSなどで魅力を発信する自称「虫屋」に聞いた。

東京育ちの丸山宗利さん、異例のベストセラー

 幼い頃から昆虫を追いかけ、「昆虫の世界を人間社会に例えることは可能ではないか」と常々思っていた。2014年に発刊した「昆虫はすごい」(光文社新書)は、昆虫好きだった元少年のみならず、女性や若者にも広がった。農業や牧畜、奴隷制に至るまで、昆虫の世界には人間に通じる普遍性があると論じてみせた1冊は、この分野では異例のベストセラーとなった。

 「社会の構造は、根本的には昆虫も人間も一緒です。たとえば力を持つ者が働かずして集団の生産力を高めようとする仕組みは、進化の途中で生まれる。人間は感情論や倫理観から考えがちだが、集団や社会の振る舞いとして、そういったことも当然起こりうると理解した上で対策を考えることが大事なんじゃないでしょうか」

 戦争やいじめ、仲間外れ、パワハラなど、昆虫の世界でもよく起きるという。「悪いことだからすぐなくせというアプローチだと、生物としてどこかに無理が出る。それが起こりうるという前提で、知恵を絞るのが良いのではと思います」

3歳の出会い、コカマキリの色彩に衝撃

 昆虫の魅力を社会に伝えるすべを身につけたのは、米国に留学したとき。研究者や学芸員は雑事に追われず専門性を磨き、社会における専門家の役割を常に意識していた。そんな彼らに刺激を受け、当時読みあさっていた英語の論文の記憶だけを頼りに、一気に下書きしたのが「昆虫はすごい」だった。

 「だから専門的な内容に深入りせず、読みやすかったのかもしれません」

 豊かな自然の中で育ったと思…

この記事は有料記事です。残り2086文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トク】締め切り迫る!記事が読み放題!スタンダードコース2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
小川裕介
西部報道センター|事件キャップ
専門・関心分野
核・原子力、感染症、調査報道
  • commentatorHeader
    小松理虔
    (地域活動家)
    2024年4月9日16時30分 投稿
    【視点】

    ぼくも「コカマ」が大好きで、あの鎌の迷彩柄のような色合いとか、茶色の身体の中にピンクの美しい羽を隠しているのとか、たまらなく好きだったなあと思い出しました。それなのに、勝手に自分を「文系」だと位置づけてしまったのはもったいなかったな、でも、

    …続きを読む