妻の働き方で世帯の手取りに2億円近くの差 東京都が試算

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浜田陽太郎

 妻が出産で退職した場合と働き続けた場合を比べると、世帯の手取り収入は生涯で2億円近い差が出る――。そんな試算を東京都の有識者会議がまとめた。パートで働く人らが社会保険料や所得税を負担しないように労働時間を抑えるといった、「年収の壁」では、保険料の支払いで手取りが減る側面が注目されたが、保険料を払うことで増える年金を含めた「生涯の手取り」を見える化しようとする試みだ。

 試算のきっかけは、「誰もが活躍できる社会」の実現に向けて、都が有識者を招いて昨年3月にスタートさせた「東京くらし方会議」(座長・権丈善一慶応大教授)。働き方改革のコンサルを手がける「ワーク・ライフバランス」の小室淑恵社長、税制に詳しい東京財団政策研究所の森信茂樹・研究主幹や、労組や企業出身の委員が、これまで7回にわたり議論を重ねてきた。

 働き方や生き方に関する社会保障制度も主要な論点で、関心の高い「年収の壁」も集中的に取り上げた。その際、「目先の保険料負担で手取りが減るのは分かりやすいが、将来の手取りがどう変わるのかが見えにくいので可視化したらどうか」という提案を受けて、事務局の都産業労働局が試算した。

 試算では、22歳で就職したカップルを想定。35歳で年収(額面)が600万円になり、64歳まで働き続ける夫のライフコースは固定したうえで、31歳まで夫と同じ年収で働き、出産した妻が、夫と同様に就業を継続した場合から、退職して就業しなかった場合まで、四つの異なる就業パターンごとに、世帯全体の賃金と年金の手取り額を89歳まで累計した。

 その結果、①妻が出産後も同じ職場で働き続ける「継続就労型」では、社会保険料と税引き後の給与と年金をあわせた総手取り額が約5.1億円(うち年金1億円)②出産で退職、子が10歳の時に再就職して年収300万円、フルタイムで64歳まで働く「再就職型」だと約3.8億円(年金9千万円)③出産で退職、子が10歳の時から年収100万円のパート(会社員や公務員に扶養される年金の「第3号被保険者」)で働く「パート再就職型」では約3.5億円(年金7千万円)④出産で退職、再就職しなかった「出産退職型」だと約3.2億円(年金7千万円)となった。

「生涯にわたって見ると…」

 出産をはさんでフルタイムで…

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この記事を書いた人
浜田陽太郎
論説委員|社会保障担当
専門・関心分野
社会保障、定年後
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    蟹江憲史
    (慶應義塾大学大学院教授)
    2024年4月1日10時24分 投稿
    【視点】

     具体的な数字を示しながら、シミュレーションの結果を見せてくれると実感がわく。今回は行政が主体的にこれを行ったことも重要な要素だ。記事ではお金の話しに終始しているが、この話しは女性の社会的な活躍をしっかりと進めることの重要性につながる点が大

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  • commentatorHeader
    小室淑恵
    (株式会社ワーク・ライフバランス社長)
    2024年4月1日18時42分 投稿
    【解説】

    若い人に知ってほしい。夫の扶養に入ることで受けられる金銭メリットは32年間でたった670万なのに対して、妻が仕事を継続することで得られる生涯賃金メリットは年金も併せて2億円であること。 実は私自身が、学生の頃は専業主婦志向だった。本やドラマ

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