無防備だった「私たち」 大学新聞記者の私に見えていなかったもの
メディア空間考 高重治香
四半世紀近く前に大学新聞サークルで作った新聞を、久しぶりに開いた。サークルの後輩にあたる現役学生から、昔の活動について取材される機会があったからだ。
変色した紙面を見て、ニュース記事はともかく、コラムや軟派な企画に「私たち」「オレたち」感があふれていることに驚いた。記者は、読者との間に「何か」を共有していると信じているのだな、と思わせるような開放感、無防備さ。
一般紙で記事を書く今の自分は、どうか。この時代に朝日新聞を読んでくれる読者との間には、何かしら共有している価値観があるのでは、という漠然とした期待がある。しかしそれ以上に、不特定多数の人が読むことへの緊張感が強い。オンラインでも記事を読める近年では特にそうだ。有料とはいえ紙よりもアクセスしやすく、SNSでどの箇所が人の目に触れるかわからない。
昔の大学新聞に漂う「私たち…
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