「伝統の場所になぜ」 長良川ニジマス流出、問われる生き物「管理」

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矢田文

 アユで有名な清流長良川(岐阜県)。2月、管理釣り堀からニジマスが流出した。食用として親しまれる産業資源のニジマスだが、侵略性の高い外来種でもある。生物多様性の損失が危ぶまれる中で、生物資源の管理のあり方が問われている。

 「世界農業遺産に認定された清流長良川ブランドのイメージダウンにつながることが危惧される」。今月開かれた県議会の一般質問で岐阜県の古田肇知事は、今回のニジマスの流出事案について問われ、こう述べた。

 長良川にニジマスの管理釣り堀が設置されたのは今年2月1日のことだ。伝統文化の鵜飼(うか)いがオフシーズンとなる時期に観光客を呼び込もうと、長良川漁業協同組合が設置した。釣り人口が減少する中、漁協は「若い人に釣りに興味をもってもらいたい」と、3月末までの期間限定での営業を予定していた。

 鵜飼いの観覧船乗り場の近くの川の一部を利用して、約3千平方メートルもの大きな釣り堀を整備。その中に、約1万1600匹のニジマスを放流していた。釣り堀と川の境界は、小さな堤や網で囲うなどして、長良川にニジマスが流出しないような構造にしていた。

推定3千匹流出、生態系への影響は?

 ところがオープンから3週間たらずの2月中旬、雨で川が増水。水位が堤を超え、囲っていた網にも穴が開くなどし、釣り堀の中のニジマスが長良川に流出した。漁協は、釣り堀に残っているニジマスの数などから、逃げ出したのは3千匹ほどと推定する。

 ニジマスは食用魚として親しまれており、1877年にアメリカから日本に持ち込まれた外来種だ。大きいものは70センチほどに成長し、雑食性で様々な生き物を捕食する。

 生態系に与える影響が大きく…

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この記事を書いた人
矢田文
科学みらい部|原子力・災害担当
専門・関心分野
いきもの、環境問題、沖縄、依存症