野生に帰れないオオサンショウウオたち 「人の都合で生まれた問題」

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矢田文
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 国の特別天然記念物オオサンショウウオ。その「交雑個体」が今夏にも、駆除の対象になりそうだ。日本の自然の象徴的存在で、文化財として守られてきたはずの「生きた化石」に何が起きているのか。

 三重県西部に位置する名張市。廃校になった小学校を利用した市郷土資料館のプールには、150匹超が飼育されている。DNA鑑定の結果を待つ個体もいるが、そのほとんどは日本のオオサンショウウオと外来種チュウゴクオオサンショウウオの両方を親に持つ交雑個体だ。

 日本の滝100選にも選定される景勝地「赤目四十八滝」など豊かな清流が残る名張市は古くからオオサンショウウオの生息地として知られてきた。市内には「日本サンショウウオセンター」が設置され、観光資源としても利用されてきた。

 市内で交雑個体の存在が明らかになったのは2010年ごろだ。国内でオオサンショウウオの交雑個体の問題が注目されるようになり、市内を流れる川にもすでに繁殖していることが京都大などの調査で判明した。

 市は13年から国と県の補助を受け、在来種の保全事業を始めた。野生の個体を捕獲し、識別のためにマイクロチップを挿入。DNA鑑定をして、交雑個体の分布状況を調べてきた。

 特別天然記念物として保護が進められる在来種とは異なり、交雑個体は保護するのか駆除するのか、その位置づけがあいまいだった。市は在来種であれば野外に戻し、交雑個体は野外から隔離して飼育をしてきた。

 当初は交雑個体も20匹程度だったが数年経つと、飼育数は100匹を超えるようになっていた。市内では今でも調査によって、毎年数十匹の交雑個体が見つかる。受け入れ先のない交雑個体を市外から受け入れることもあるという。

 環境省は今月、こうしたオオサンショウウオの交雑個体を外来生物法に基づく特定外来生物に指定する方針を固め、公表した。特定外来生物に指定された生き物は原則として、移動や飼育、譲渡・販売などが禁止される。さらに、自治体は国の支援を受けて駆除ができるようになる。

 ただ、在来種と交雑個体の識別は、専門的知識がないと難しい。一見、交雑個体のように見えても在来種の可能性もあり、専門家の目の届かないところで、むやみに捕獲や駆除を進めるのは避けた方が良さそうだ。

 市教育委員会の文化生涯学習

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