第6回けんかと病で得た「愛の厚み」 ふたりは元幼稚園教諭とツアーナース
小川を見下ろす石段に2人並んで腰掛けると、すぐ横の朝市で買ったあんパンとブルーベリーロールパンをほおばった。愛犬マロニーにも、少しだけ。
1月末の朝8時半、数日前に降った雪はすっかり解け、太陽が降り注いだ。
「そろそろいく?」「家でゆっくりしよか」。2人の日曜日が始まった。
兵庫県境に近い岡山県美作(みまさか)市の山間部。およそ40世帯80人が暮らす角南(すなみ)地区に、丸山真弥さん(48)と馬場奈緒美さん(46)は住んでいる。
5年前、人里離れた山林を買い、小さな家を建て、電気や水を通した。庭にはドーム形のテントを建て、中にテーブルやこたつを置く。本棚と読書スペースを積んだ車、キッチンカーやサウナカーも。地域の人たちが、食事やおしゃべりに集う場になった。
「いつか私たちのどっちかが先に亡くなって1人になっても、誰かが会いに来てくれるように」
丸山さんがそう思ったのは、自身の病気がきっかけだった。
幸せになるために、人生をともに歩むと決めたはず。でも、パートナーとの毎日が思い描いたものにならない人もいます。苦しみの原因は、改善策は。たくさんの「ふたりのかたち」を通して考えます。
1年余り前。始まりは、突然の頭痛だった。馬場さんが運転する車で、病院へ急いだ。集中治療室に緊急入院した。
医師の診断は脳出血。入院中から、後遺症として失語症の症状が出始めた。馬場さんは市役所へ走り、外見からわからない援助や配慮が必要な人が身につける「ヘルプマーク」をもらい、丸山さんがいつも使うカバンに付けた。病後の寒さは大敵だと聞き、ストーブを買い足した。
退院からしばらくして、今度は2人で市役所に行った。2人の関係を公的に証明するパートナーシップ宣誓制度に申請し、クレジットカード大の紙の証明書を市からもらった。
婚姻した夫婦のように、配偶者として法的な保障を受けられるわけではない。日本で法律婚ができない同性カップルにとっては「お守り」のような物。それでも、ないよりある方がまし。お互いを守れる確率が高まるかもしれないと思った。
ふたりでどう生きていく?
「今日も一日ありがとう」
丸山さんは退院してから、毎…
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