花房吾早子

大阪社会部 | 平和・人権担当
専門・関心分野原爆、核廃絶、ジェンダー、LGBTQ+

現在の仕事・担当

広島、長崎の被爆者やその体験を伝える戦後世代、核廃絶をめざす活動などを取材しています。パレスチナやウクライナなど世界の戦争に対し声を上げる人たちの動きもウォッチしています。多様な性を生きる人たちやそのコミュニティー、社会の変化を追いかけています。

バックグラウンド

2008年入社。徳島、長崎をへて、13年に大阪に来ました。大阪市北部の警察署や地域、市役所、大学などを担当しました。平和・人権担当は戦後・被爆69、70年に続き2回目です。

17~19年に休職し、米サンフランシスコの大学院に行きました。セクシュアリティー・スタディーズという分野で、社会学や心理学など領域を横断しながら性について学びました。修士論文の主題は、日本から米国に移住したLGBTQの夢と現実のオーラル・ヒストリー。学外では、様々な国籍や人種の人たちとLGBTQに関する地域団体でボランティア活動に明け暮れました。

21~23年、系列放送局の広島ホームテレビに研修派遣されました。昼夕の情報・報道番組向けのニュースや特集制作のほか、30分や1時間のドキュメンタリー番組を作りました。

仕事で大切にしていること

その道で力を尽くす人たちから教えていただくという姿勢で取材したいと思っています。私と立場や考えの違う人と出会った時、尊重する気持ちを忘れず耳を傾けたい、簡単に善悪を決めたくないと言い聞かせています。何かを伝えたいのに伝えるエネルギーに限りがある人のために、私のエネルギーを使えたらうれしいです。

タイムライン

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「LGBTQ+ツーリズム」はなぜ必要? 大阪でアジア初の国際会議

 性的少数者に快適な旅行をめざす「国際LGBTQ+旅行協会」(IGLTA)の総会が23~26日、大阪市内で開かれる。およそ50の国・地域から観光事業者ら約500人が集い、情報交換や人脈づくりをする。アジアで開催するのは初めて。  IGLTAは1983年創立の国際団体。米フロリダ州に本部を置く。80カ国のホテルや交通機関、ツアー会社などが加盟する1万3千人以上のネットワーク。毎年の総会では、各国の事業者やインフルエンサーらが性的少数者に向けた取り組みを発表し、ビジネスチャンスへつなげている。  日本からは17社・団体が加盟している。今年の会場は、会員企業の一つ、スイスホテル南海大阪(大阪市)。石川県や札幌市など4自治体と観光事業を担う3財団がブースを出し、日本の観光地の魅力をアピールする。会場周辺や大阪市内の観光案内所などでは、来訪者への歓迎メッセージとして、多様な性を象徴する虹色のポスターやのぼりを掲げる。  大阪開催の背景には、大阪観光局の地道な活動がある。様々な人が安全・安心に楽しめる「ユニバーサルツーリズム」の実現をめざす中で、性的少数者を意識した「LGBTQツーリズム」を推進してきた。  2019年からアドバイザーを置いて観光事業者に研修を実施。同性愛者ら向けのバーや性的少数者が楽しめるイベントなどを紹介するサイトも開設し、海外のブロガーを招いたツアーや、男性カップルが観光を楽しむ動画の制作など、発信にも力を入れた。  溝畑宏理事長(64)は「アジアナンバーワンの国際観光文化都市をめざすうえで必須だった」と話す。  当初、おおげさなメイクや衣装で踊りや歌を披露する「ドラァグクイーン」を前面に押した広告を出したこともあった。だが、性的少数者の多くがドラァグクイーンのような印象を与えかねないとして、抑えめに。溝畑さんは「暗中模索の中で、何となくバランスが見えてきた」という。  25年の大阪・関西万博を見すえ、前年のIGLTA総会開催地に立候補。23年に理事の投票で大阪に決まった。  「観光とは、人と人との交流。グローバルでボーダーレスだからこそ、課題を抱える社会に風穴を開けやすい」と溝畑さん。大阪を中心に日本全体で盛り上げたいという。 ■観光で働く人へ「どんなお客さまでも楽しい思い出を」  大阪観光局のアドバイザーを務める小泉伸太郎さん(55)は、男性同性愛者であることを公にし、LGBTQ向けの旅行などを手がけるコンサルティング会社(東京)を営む。なぜ「LGBTQツーリズム」の推進が必要か聞いた。      ◇  国際LGBTQ+旅行協会(IGLTA)の総会が大阪で開かれることになり、「時代は変わったな」と感じます。これまでの開催地は、米国やカナダ、ドイツなど欧米中心。日本は、性的少数者にとって安全・安心な旅先として見られていなかったのだと思います。私が2009年にコンサル会社を起業した時、性的少数者の外国人に日本への旅行を紹介しても、なかなかお客さまを得られませんでした。  当然ですが、性的少数者も旅行をします。でも、同性カップルなのに友だち同士として扱われたり、トランスジェンダーのために男女別に分かれた大浴場の温泉に入るのを諦めたりすることがある。一生の思い出になるかもしれなかった旅行で傷ついてしまう。どんなお客さまでも楽しい思い出をつくれるよう、一緒に真剣に考えるのが観光業界で働く人の役割だと思います。  私が15年に観光事業者向けに研修を始めたころ、参加者は「LGBT」という言葉の意味を知らない人がほとんどだった。今は、自治体や企業が率先して学び、広まっている。  お客さまへのサービスを向上させるには、まず自分の組織の中で働く人への対応を改善することから。ホテルや鉄道会社などではLGBTQの従業員を想定し、福利厚生制度を見直す会社も増えています。  大阪でIGLTA総会が開かれることは、ゴールではなくスタート。世界から学び、観光立国として多様な人に訪れてもらえる環境を日本全体でつくっていけたらと思います。

6日前
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10回目の多様な性の祭典 「堂々としてたらええやん、これが自分」

 多様な性の祭典「レインボーフェスタ!」が今年、大阪市で10回目を迎える。公園で音楽や飲食を楽しみながら、性的少数者をめぐる社会の課題を知る場。初回から支える共同代表の一人は、規模を広げてきた催しに、自身の変化を重ねる。  「こんなん絶対参加できへん。参加したが最後、誰かにバレるんちゃうか」  レインボーフェスタ!がまだなかった2011年、桜井秀人さん(45)は、性的少数者らが歩くパレードをそんなふうに見ていた。  大阪府南部で生まれ育った。自分の性別は男性で、恋愛対象は女性のときもあれば男性のときも。「周りにバレたらあかん」と幼い頃から思ってきた。  大学卒業後、友人に打ち明け、インターネット上の掲示板で仲間もできた。でも、家族や職場の人には知られたくないと、自分の言動に注意を払ってきた。パレードを歩けば、どこから誰に見られるかわからない。友人に誘われても、沿道から見守るにとどめた。  2年後の13年、女性同性愛者らの発案で、「レインボーフェスタ!」が生まれた。  「ひとりひとりのセクシュアリティーをお祝いするお祭り」「誰もが楽しめるお祭り」を掲げ、歌やダンスのステージ、市民団体や企業などが性的少数者のための情報を提供するブースがつくられる。  会場は大阪市北区の扇町公園。スポーツやピクニックを楽しむ人、近くの商店街を訪れる人らが行き交う場所だ。それまで御堂筋を歩いていたパレードはコースを変え、扇町公園を発着点とすることになった。  桜井さんはこの頃、同性カップルらの結婚式を企画するプランナーとして働き始めた。「仲間を祝福するイベントに関わるのに、自分が自分に正直になれなくていいのか」  レインボーフェスタ!の実行委員になり、ステージの司会に手を挙げた。「バレたら言い訳すればいい」と言い聞かせ、他の実行委員2人と恐る恐る来場者の前に立った。  限られたバーやオンラインでしか話したことのなかった人たちと、広い空の下で顔を合わせる。見知らぬ人からも声をかけられる。「クローズだった自分が、オープンになっていく感覚」  翌年から共同代表になると、ステージの出演者選びやデザインに力を入れた。幅広い人たちが来場し、性的少数者の存在や困難に関心を寄せる入り口にしたかった。  近年では、府立高校の吹奏楽部、ラグビーのリーグワン所属の「レッドハリケーンズ大阪」を招き、「生徒の保護者」や「ラグビー好きの子ども」といった層の来場を促した。  タレントのはるな愛さん、歌手の島谷ひとみさん、大阪のご当地アイドル「オバチャーン」など著名な人の出演も実現。今年は、歌手の愛内里菜さんやデュオ「花*花」が出る。  当初10前後だった出演者の数は、10回目の今年は30近くに。開催日も18年からは2日間に延びた。初回に約6千人だった来場者は、昨年は約2万8千人までふくらんだ。  楽しそうに笑っている来場者の姿が、桜井さんの自信になった。学校や自治体で多様性に関する研修の講師を務め、昨年からメディアの取材に顔を出す。今年は初めて、職場の人たちに打ち明けた。  「後ろ指さされるようなことはしてへん。堂々としてたらええやん、これが自分やし」  今年は10月26、27の両日に開かれる。 ■過去に出演の笹野みちるさん「共有できる信頼感」  桜井さんが初めてレインボーフェスタ!の共同代表になった2014年、テーマソングに選んだのは、バンド「東京少年」の「陽(ひ)のあたる坂道で」だ。1990年の発売当時ボーカルで、バンド解散後はソロで活動する歌手の笹野みちるさん(56)が作詞した。  普遍的な愛の尊さを伝える歌として、2015年以降のレインボーフェスタ!でも毎回、会場のBGMの1曲として流れている。  《Love You, So Long 離れても消えない 君との約束は Love You, So Long 夢ととなりあわせ 陽のあたる坂道で》  こうしたフレーズで歌は始まる。笹野さんは「色んなことが自分の中で混乱していた時期に、自分の心の居場所を取り戻すような思いで歌詞を書いた」と振り返る。  笹野さんは1995年、自著「Coming Out!」で女性同性愛者であることを公にした。世間の反響に圧倒され、心の病を患った。  出身地の京都で大学時代の友人とバンドを始める一方、カフェのシェフを経て、障害者福祉施設の職員となった。  2017、22年のレインボーフェスタ!では、ステージ出演を頼まれ、聴衆の前で歌った。  「この人たちとは何かを共有できるという信頼感、他ではない一体感がある。安心してメッセージを投げ、返され、ラリーできる感じ」  笹野さんがカミングアウトしてから約30年。近年では、同性カップルを夫婦と同等と証明するパートナーシップ制度が全国の自治体で広がるほか、国が同性婚を認めないのは憲法違反だとする判決が出るなど社会が変化してきた。一方、生まれた時と異なる性別で生きようとするトランスジェンダーへの中傷がネットなどで深刻化している。  笹野さんは「誇りを持って生きていこうよ、お互いに。一つひとつの扉にぶち当たって、開けていこう」と話す。

6日前
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安心できる居場所「LGBTQ+センター」って? 図書館でパネル展

 性的少数者が安心して過ごし、仲間とつながれる――。各地にあるそんな居場所を紹介するパネル展「LGBTQ+センターってなんやろ?」が21日~11月2日、大阪府立中之島図書館(大阪市北区)で開かれる。必要とする人たちに知らせたいと企画された。  東京、大阪、愛知、福岡、群馬、愛媛の各都府県の14カ所を紹介。市民団体が常設のスペースを運営するケースが大半で、一部は催しごとに公園やカフェなど場所を変えて集まる。  パネルには運営スタッフの写真をできるだけ載せ、「顔の見える存在」を意識した。  主催は、居場所の一つ、プライドセンター大阪(大阪市北区)を運営するNPO法人虹色ダイバーシティ。村木真紀代表(49)は「性的少数者が直接足を運べて人と出会える場のあることが、なぜ大切か、まだまだ世の中に伝わっていない」とみる。  プライドセンター大阪は2022年4月に開設され、のべ約3千人が訪れた。学校や企業、自治体などによる見学のほか、性に関する悩みの相談に訪れる人も少なくない。「来ている間は嫌なことを忘れられる」「話を聴いてもらい、心が楽になった」といった声が寄せられている。  性的少数者の居場所として以前から知られるのは、バーやクラブ、ショーパブなど夜に酒を飲みながら楽しむ場。店によっては大音量の音楽が流れたり混み合ったりと、必ずしも落ち着ける空間ではない。日中に街中を歩くパレードや、市民団体や企業などが情報ブースを出展する催しもあるが、大勢の目にさらされることを恐れる人もいる。  村木さんは「偏見や差別を恐れ、息をひそめて暮らしてきた人が1歩目を踏み出すには、センターのような居場所が必要」と言う。  プライドセンター大阪の場合、多様な性に関する本500冊以上を本棚にそろえ、来た人がその場で読める。一人で読書に集中したり、備え付けの机で勉強や仕事をしたり、友だちやスタッフとおしゃべりしたり、自由に過ごせる。  定期的に少人数のイベントも開く。ゲームや本、俳句や映画など様々なテーマにすることで、趣味の合う人同士が知り合える機会となるよう意図している。  パネル展の開催を自ら申し出た中之島図書館統括責任者の斉藤尚さん(69)は「居場所が必要なのは、社会全体がまだ性的少数者にとって安全安心ではないから」と話す。「いつか特別な場所が必要なく、ニュースにもならないような時代になれば」と願う。

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