神埼市長が辞職届、市議「当然で遅かった」 説明なく市長選へ

三ツ木勝巳 大下美倫

 佐賀県神埼市のふるさと納税PR業務をめぐる入札妨害事件で、官製談合防止法違反(入札妨害)と公契約関係競売入札妨害の罪で起訴された内川修治市長(71)が辞職を決めた。50日以内に市長選が行われる。市長逮捕から約1カ月後に出された辞職届に、議会からは「前に進める」との声も出た。ただ、事件の解明は司法の場に移っていることもあり、市民に直接の説明がないままの辞任となった。(三ツ木勝巳、大下美倫)

 内川市長の辞職届は11日午前、代理人の弁護士が市議会の議長室に持参し、田原和幸議長に手渡された。

 その際、田原議長が弁護士に対し、市長からの伝言があれば預かる、と申し出た。すると、弁護士は用紙1枚にまとめた、市長の言葉を田原議長に渡した。そこには「申し訳なかった」といった市長の言葉が入っていたという。

 辞職届は15日付。市議会は急きょ、議会運営委員会を開き、辞職届をとりあつかうための本会議の日程などを協議した。

 議運委では、内川市長が提出した「この度、一身上の都合により、令和6年3月15日をもって辞職いたします」とする内容の辞職届が読み上げられた。

 その後の協議では、委員から「(辞職の)期日について早急に、明日にでも、本議会を開いて、議員の同意を求めるということが必要」との意見が出た。他の委員も賛同し、全会一致で本会議を12日午前に開くことが決まった。

 12日の本会議で同意されれば、15日付の失職が決まる。また、田原議長が預かった市長の言葉も、12日の議会で読み上げられる。

 議運後、田原議長は記者団に、「この事態は遺憾だが、市長に(辞職を)決断をしてもらったことで、市民や職員、議会も前を向いて進めるという感覚ではないか」と語った。

 50日以内に実施される見通しの市長選については、「(新年度予算など)市政に滞りがないようにということを第一に考えていたので、まだまだ及びもつかない」と述べるにとどめた。

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 市長の辞職が決まったものの、失われた市民からの信頼を取り戻すことは簡単ではなく、市議からは複雑な思いが聞かれた。

 白石昌利市議は記者団に「(市長から)市民に直接訴えかけるメッセージがまだ流れていない。なぜこうなったのか、迷惑をかけたことへの謝罪が必要だ。市民から多くの期待を寄せられて当選した首長だったので、責任は政治家として果たすべきだと思う」と述べた。

 市議会では市長に対する辞職勧告決議の採決に向けた動きもあった。ある市議は「辞職は当然で遅かった。早くやめてほしいというみんなの思いが決議案にあった」と話した。

 報道でしか状況が分からず、市長との面会もできなかったという。「逮捕を受けての市長の内心が分からなかった。市長選に出る人は市民や職員に誠実な人であってほしい」

 その上で、こう語った。「市民の信頼を失ったわけだから再出発です。議会が監視する役割も不十分だった。一歩一歩、信頼を勝ち取っていくしかない」

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 現職市長が絡む、ふるさと納税PR業務をめぐる入札妨害事件。

 起訴状などによると、内川市長は昨年2~3月、業務の委託先を公募型プロポーザル方式で選定する際、市内のコンサルティング会社「ブルー・フラッグ」が選ばれるよう、秘密事項の評価委員の氏名や公募に参加する他社の企画提案書などを、公契約関係競売入札妨害の罪で起訴されている同社代表取締役の島由美子被告(62)に伝え、入札の公正を害したとされる。

 県選管の資料によると、島被告は、内川市長の後援会の会計責任者だった時期がある。

 佐賀地検は認否について「証拠の内容そのもので、公判で明らかにされるべきだ」として明らかにしていない。

 内川市長は旧千代田町長を務め、2006年の市長選に立候補したが、旧神埼町長の松本茂幸氏に敗れた。その後、県議を3期務め、22年の市長選に立候補し、5選を目指した松本氏や、前市議との三つどもえの選挙戦を制して初当選した。

 選挙戦で、市内の地域格差をなくし、特色を生かした元気のある街づくりをめざすと訴え、ふるさと納税の寄付額の増額も公約に掲げていた…

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