LRTは走れるか 和歌山市が新年度重点施策に「導入可能性の検討」

寺沢尚晃
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 昨年、栃木県にできた次世代型路面電車(LRT)を走らせることができないだろうか――。和歌山市では2015年度の1年間、役所内のチームで研究するなど、導入の検討を続けてきた。

 「宇都宮のLRTは、非常に活力が出てきた感じがする」「これまで検討してきたが、さらに新年度は交通量、道路の幅員やカーブの具合をみて、具体的に実現の可能性があるかどうかの調査をやっていきたい」

 今月15日、市の24年度当初予算案発表の記者会見で「未来をつくるモビリティ」というスライドを示しつつ尾花正啓市長が力説した。

 予算案には、検討のための費用は盛り込まれなかったが、重点施策として「導入可能性の検討」と明記された。23年8月に運行が始まった宇都宮市の事例を分析するという。

 市がLRTの導入を模索するのは、地方公共交通機関に対する懸念がある。自動車運転免許を返納した人たちへの対応が求められる一方で、全国的にバスなどの運転手不足も深刻化している。

 和歌山市では今月、けやき大通りで自動運転によるバスの実証運行を実施した。群馬大学発のベンチャー企業「日本モビリティ」と共同で、JR和歌山駅から和歌山城公園までの約2キロの区間でバスを時速20~30キロで走らせた。試乗した市民約360人からはおおむね好評だったという。

 同様に運転手不足が懸念される鉄道でも、南海電鉄が自動運転の実証実験を始めている。

 しかし、実現へのハードルはいくつもありそうだ。尾花市長は記者会見で「LRTを観光としても活用できないか。採算面と物理的な面と両方検討したい。課題は事業者が現れるか」と語り、実現の時期については明言しなかった。

 市交通政策課の大畑敦義課長は「LRTは、高齢者や環境に優しい乗り物として注目されている。まずは栃木で、どのように運営され、街に生かされているかを研究したい」と話している。

開業半年で200万人

 栃木県のLRTは宇都宮市の「宇都宮駅東口」と芳賀町の「芳賀・高根沢工業団地」の間14・6キロを走る。事業費は684億円。運行を宇都宮市や地元経済界などでつくる第三セクター「宇都宮ライトレール」が担い、軌道整備は宇都宮市と芳賀町が行う「上下分離方式」で運営されている。

 今月、開業後の利用者が200万人を超えた。当初の見込みよりひと月ほど早いという。運行会社の担当者は「国内の路面電車新設が75年ぶりということもあり、観光目的で利用する人も多い。今後も利用者を増やしていきたい」と話している。(寺沢尚晃)

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 LRT ライトレールトランジット(Light Rail Transit)の略。乗降しやすい低床式車両で、軌道を走る次世代の交通システムとされている。欧米では環境負荷の小さい都市型の公共交通として導入が進む。

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