首相就任を祝う会、不明確な「事務局」 かみ合わぬ関係者たちの説明
岸田文雄首相の政治団体の政治資金が国会で取り上げられた。野党議員が疑問の目を向けたのは、「内閣総理大臣就任を祝う会」からの寄付約321万円。岸田首相は、任意団体が開催した会だと説明し、その収支は明らかにされていない。朝日新聞は関係者に取材を重ねたが、岸田事務所と祝う会代表者との説明にはかみ合わないところがあり、祝う会の実態は見えない。
「(祝う会の)実態は岸田事務所あるいは岸田後援会の政治資金パーティーだったのではないか」
立憲民主党の大西健介議員は1月29日の衆院予算委員会で、疑義を投げかけた。祝う会のお知らせにあった連絡先が、岸田事務所だったことなどを理由に挙げた。
政治資金パーティーは会費を徴収し、経費を引いた残額を政治活動に支出するものとされ、その収支を報告する義務などがある。
ただ、岸田首相は、事務所の人間が手伝ったことを認めた上で「主催者は任意団体」と説明。その収支などは報告されていない。
立憲の山岸一生議員も2月6日の予算委で、「誰かにお願いしてパーティーを開いてもらって利ざやを政治家に寄付すれば、政治資金パーティーとしての縛りを受けない」と、脱法的な手法だと問題視した。
いったい、この祝う会とは――。
「衆議院議員岸田文雄先生 内閣総理大臣就任を祝う会」は、2022年6月12日に開かれた。会場は首脳会談で使われたこともある広島市内のホテル。関係者に配られた発起人名簿には、知事や各種経済団体トップ、岸田文雄後援会の会長ら11人の名前が並ぶ。
入手した案内状によると、会費は1万円。当日は混雑が予想されるとして事前の振り込みを求め、感染症拡大防止の観点から飲食提供のかわりに土産を用意している、とある。
約1時間の会で、岸田首相は政治人生を振り返り、翌月の参院選にも触れ、30分間のあいさつをしめた。参加者によると、土産は岸田首相の著書だった。
岸田首相が代表の政党支部「自民党広島県第一選挙区支部」の政治資金収支報告書によると、開催から3カ月後の9月12日、祝う会から321万5167円の寄付を受けた。祝う会の代表者は岸田文雄後援会長を務める男性で、所在地は広島市内の住所だった。
祝う会の代表者と岸田事務所の回答
1月22日、その住所地に向かった。
建物には、男性が代表理事を務める協同組合が入っていたが、男性は不在。男性の会社を訪ねると、男性は打ち合わせ中とのことで、質問書を渡した。広島市中心部にある岸田事務所も訪れたが、文書で質問してほしいと言われた。双方への質問書では、祝う会を開いた団体の実態や祝う会の収支を聞いた。
祝う会代表の男性の回答書に…
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