EU、米国への報復関税を承認 第1弾は15日、バーボンは対象外に
欧州連合(EU)は9日、米国が発動した鉄鋼・アルミニウムへの関税に対する報復関税案を承認した。3段階に分けて発動し、第1弾は15日に設定。当初予定していたバーボンは、米国の報復を恐れた加盟国が猛反対し、対象から外れた。
トランプ米大統領は9日、「相互関税」の税率の一部の運用を90日間停止すると発表したが、EUの報復措置は、3月12日に発動された鉄鋼・アルミ関税に対するものだとしている。
政治専門サイト「ポリティコ」などによると、対象となるのは大豆やオートバイ、デンタルフロスなど約220億ユーロ(約3・5兆円)相当の米国産品。10~25%の関税を課す。当初は最大260億ユーロ(約4・2兆)相当を想定していたが、米国を刺激したくない一部の加盟国の意向が反映され、規模が縮小した。
特にバーボンは、対象にすればEUからの酒類に200%の関税で対抗すると、トランプ氏が反発。「酒戦争」とも言える緊張が高まり、ワインの産地のフランスやイタリアといった加盟国が除外を強く求めていた。
この日、米国が発動した相互関税を加えると、EUの試算では一連の「トランプ関税」で対象となる米国への輸出品は、全体の77%に当たる約3800億ユーロ(約61兆円)に達する見通しだ。
行政機関の欧州委員会は「米国が公正でバランスのとれた交渉結果に同意すれば、対抗措置はいつでも停止される可能性がある」と言及。まずは15日に発動するが、交渉での解決をめざすため、残りは5月と12月の2回に分けて発動し、交渉時間を確保するという。
ただ、交渉のカードは多くはない。フォンデアライエン欧州委員長は7日、自動車を含む工業製品の双方の関税をゼロにする案を米側に提示したと明かした。トランプ関税が本格化した2月以降、再三示してきた案で、「手駒」が少ない苦しい現状を露呈したかたちだ。
EU側の提案をトランプ氏は「(関税ゼロでは)十分ではない」と一蹴。「我々のエネルギーを購入する必要がある」と述べ、EUに3500億ドル(約50兆円)分の液化天然ガス(LNG)などの購入を迫っている。
ここで頼みの綱は、トランプ氏と距離が近いイタリアのメローニ首相だ。17日にトランプ氏と会談する予定で、相互関税発動後、初めて会談するEU加盟国の首脳となる。これまでトランプ氏と直接交渉できなかったフォンデアライエン氏らEU首脳に代わって、米側の譲歩をどこまで引き出せるかが鍵になる…