「香害」対応求める9千の署名 メーカー各社「安全性確認している」

中村英一郎
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 柔軟剤や合成洗剤の香料が原因とみられる体調不良などの「香害」に悩む人たちが、メーカーに対応を求めている。退職や幼稚園の退園を余儀なくされたと訴える人も。一方、メーカー側は取材に対し、「安全性が確認された成分を使用している」としている。

 東京都内の区議や全国の市議らが1月、香料入りの「マイクロカプセル」を配合して香りを長続きさせる製法の中止を求め、柔軟剤メーカー3社(花王、P&G、ライオン)と日本石鹼(せっけん)洗剤工業会を訪問。署名8889筆を提出した。

 署名は全国の地方議員らからなる「香害をなくす議員の会」などが、昨年10月~今年1月、郵送やオンラインで集めた。

 同会代表で兵庫県宝塚市の寺本早苗市議は1月23日、東京都千代田区の衆院議員会館で開いた会見で、同市内の小中学生の約8%が「人工的な香料で体調不良を起こしたことがある」との調査結果を紹介。「せめて、香りを長続きさせるマイクロカプセルの使用を規制してほしい」と理解を求めた。

 香りのあるカプセルの使用に関して、署名を受け取った花王(東京都中央区)は、取材に「好きな香りを快適に感じられるよう、香りを保つ目的で配合している」と回答。ライオン(東京都墨田区)は「長続きというより、特徴を変化させないために使用している」とした。

 一方、P&Gジャパン(神戸市)を訪問した寺本市議によると、「2週間ほど前に訪問を申し入れたが署名を受け取ってもらえず、郵送した」という。同社は取材に「お約束がない面談はできなかった。後日送付いただき受け取っております」とコメントした。

柔軟剤の販売額、20年間で倍増

 香害問題をめぐっては、消費者庁文部科学省など5省庁が2021年、「柔軟剤などの香りで頭痛や吐き気がする」との相談が寄せられているとして、香り付き製品の使用に配慮を呼びかけている。

 都は、都立病院職員に対して、柔軟剤などの香りに注意するよう指導。患者用リネンの洗濯では、無香料の洗剤を使うなどの対応をしている。

 経済産業省の調査では、無香料のものも含め、22年の柔軟剤の年間販売量は約40万トン、販売金額は約1211億円で、20年前からほぼ倍増。日本石鹸洗剤工業会が20年に1都3県の20~50代の消費者を対象に行った調査では、約8割が香りつきの柔軟剤を使用したい意向を示した。(中村英一郎)

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