テイラー・スウィフトのクレバーさ 歌で語れる強さと赤裸々な告白と
米シンガー・ソングライターのテイラー・スウィフトが7日から、海外女性アーティストとして史上初の東京ドーム4日連続公演に臨んでいる。史上最大規模のツアーやグラミー賞での歴代記録の更新から、プライベートの恋愛事情まで、話題に事欠かない34歳。16歳でデビューしてからの進化について、音楽ライターの粉川しのさんに話を聞いた。
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――社会現象とも言われる絶大な支持の理由は何でしょうか。
これほどとてつもない文化的、社会的なインパクトを持つ状況を作った要因の一つは、テイラー自身の物語性にあります。
一番のすごさは、彼女の歌が、ファンにとっては自分のことを歌っていると錯覚させるような詩の力が根底にあること。
彼女のファンには、恐らく10代から30代前半までのいわゆるZ世代やミレニアル世代が多いのですが、彼女たちはみんなテイラーの歌を聴きながら、テイラーと一緒に成長しています。ここまで自分の人生に寄り添う歌を歌ってくれていると錯覚させるような曲を書けるシンガー・ソングライターは、彼女以外に今いないのではないか。それくらいの能力を持っています。
個人的な失恋も、彼女が歌詞にして歌うとなぜか普遍的な歌になる。文学として優れていると思います。世界トップのスターなのに、彼女の歌を聴いていると、彼女と自分だけの世界に入れる、とてつもなく甘美な瞬間があります。
――なぜそれほどの共感を得られるのでしょうか。
テイラー自身が、16歳で若くしてデビューした後、成長や変化を体現しているアーティストだからです。
デビュー当初のテイラーは、「米国の理想のガールフレンド」のように言われていました。保守的なカントリーの世界に登場した、ギターを抱えて歌う金髪のかわいい女の子。そんな典型的なアメリカンガールとして現れた彼女が、作品を追うごとにどんどん変化していくのです。カントリーにとらわれず、ポップ、R&B、エレクトロニック・ミュージック、インディー・フォークとサウンドが変化し、「かわいい女の子」の時期を終えた自我の芽生えとともに、失恋だけではなく自分の人生の悩みや女性としての悩みを訴えたりし始めるわけです。
スターになればアンチも増え…