宇都宮でLRT都市サミットを開催 「サミット宣言」も採択

石原剛文
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 【栃木】次世代型路面電車(LRT)の導入に取り組む自治体が参加する「LRT都市サミット」が26日、宇都宮市のライトキューブ宇都宮で開かれた。路面電車のある各都市がそれぞれの事例を紹介し、静かさやバリアフリーなどが特徴であるLRTの導入拡大をめざす「サミット宣言」を採択した。

 2009年から開かれているサミットは9回目で、宇都宮市での開催は初めて。本格的なLRTが走る富山市を始め、路面電車がある札幌、広島、熊本など10市が参加した。会議は「ゼロからの挑戦 まちの未来を紡ぐLRT」をテーマに進められた。

 会議では、国内で初めてLRTを全線新設した宇都宮市―芳賀町間の現状を宇都宮市が説明した。事業費約684億円のうち市が約313億円、芳賀町が約45億円を負担する内訳のほか、初乗り150円から400円までの料金体系やJR宇都宮駅新幹線の始発・終電に対応した運転時間帯について紹介した。

 このほか、平日約97%、土日祝日約87%とキャッシュレス乗車率が高いことや、車などとの乗り換え場所となるトランジットセンターの駐車場が常に満車であるため増設したこと、平日の1日あたりの平均利用者数が4カ月連続で増え続けていることなども、データとともに示した。

 LRTの沿線の人口(2012~22年)が約4600人増えた点にも言及し、佐藤栄一市長はLRTについて、路面電車の文化のない地域にゼロからつくりあげた事業であるとしたうえで「必要不可欠な都市の装置」と話した。

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 他市の担当者もパネリストとして登壇し、路面電車の現状やLRT導入に向けた取り組みを紹介した。

 国内で初めて本格的なLRTを導入した富山市は、公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりを進め、過度に車に依存したライフスタイルを見直し、「歩いて暮らせるまち」を実現した。人口が減少している宇都宮市のまちづくりの方向性と重なる取り組みだ。

 中心市街地では転入人口が転出人口を上回っているという。担当者は「LRTを活用したまちづくりが特徴。中心市街地のにぎわいにつながっている」。

 札幌市では既存の車両に加えて低床型車両も導入し、車両と停留場の段差を解消するバリアフリー化を進めている。同時に走行時の振動を抑えるレール改修工事にも取り組んでいる。担当者は「路面電車は観光客の足としても重要。後世に残すため、LRT化などで利用促進に取り組んでいきたい」と語った。

 意見交換では、路面電車の効果について「車から乗り換える人が多い」「経路が分かりやすい」「観光資源として重要」といった声があがった。事業の継続性については「存続させていくためには利用されることが重要」とし、時代に合わせた改善をしながら、経営を安定させる必要があるとする意見が出た。

 この日採択されたサミット宣言には、路面電車のLRT化の取り組み、LRTの走るまちの魅力を市民と共有すること、経営基盤の強化への支援などが盛り込まれた。

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この記事を書いた人
石原剛文
宇都宮総局
専門・関心分野
教育、コミュニケーション