国際司法裁判所、イスラエルに暫定措置命令 作戦停止には踏み込まず

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ブリュッセル=杉山正

 国際司法裁判所(ICJ)は26日、パレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルに対し、暫定措置としてジェノサイド(集団殺害)行為を防ぐ「全ての手段」を講じることなどを命じた。攻撃がジェノサイドにあたるとして、南アフリカが提訴し、軍事作戦停止を含む暫定措置を求めていた。ICJは人道危機に懸念を示したが、作戦停止の命令には踏み込まなかった。

 ドノヒュー裁判長は「この地域で繰り広げられている惨劇を痛感しており、人命の損失と人々の苦悩が続いていることに深く憂慮している」と述べ、イスラエルにジェノサイドの防止と関連の証拠の保全を命じた。命令にはジェノサイドの扇動を防止する手段を講じることや、ガザの人々への人道支援を供給するために、有効な方策の即時実施も含まれている。

 ICJの暫定措置命令は、ジェノサイドの認定は伴わず、長期化が見込まれる裁判の審理が継続する間、緊急的に人々を保護するための仮処分だ。命令に法的拘束力はあるが、ICJには強制的な執行手段がない。

 国連の司法機関であるICJはこれまで国家の行為にジェノサイドを認定したことはなく、認定にはジェノサイドの意図を立証する必要があり、ハードルは高い。最終的な判断までには数年かかるとみられている。

 特定の民族や人種への殺害や…

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この記事を書いた人
杉山正
ヨーロッパ総局長
専門・関心分野
国際政治、紛争、外交、民主主義
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    三牧聖子
    (同志社大学大学院教授=米国政治外交)
    2024年1月26日23時2分 投稿
    【視点】

    ICJはイスラエルにジェノサイド的行為の停止を命じた。停戦を命じていないという大きな問題は残るが、ここに至る歴史的過程を考えても歴史的な判断ではないか。 なぜ地理的にもガザから遠く離れた南アフリカが、パレスチナ市民の命と権利のためにこ

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