第22回ゆがんだ国会を「くじ引き」でまともに 政治哲学者が問う選挙の欠陥
自民党の派閥による裏金事件を受け、「次の選挙で有権者の一票が問われる」と言われています。ところが、政治哲学者の山口晃人(あきと)さん(28)は「選挙だけで民意を反映するのは難しい」との立場です。選挙による政治の問題点と、それを補完する「くじ引き民主主義」の可能性を聞きました。
国民の意思は反映されているか
――山口さんが研究している「くじ引きによる民主主義」とはどういうものなのでしょうか。
民意を反映する政治を実現するため、無作為抽出によって「国民の縮図」をつくるというものです。裁判員制度で、くじで選ばれた一般市民が裁判員として刑事事件に参加し、判決が下されていますが、これを政治にあてはめるイメージです。
いまの日本の国会は、親も政治家だった世襲議員をはじめ、社会的に恵まれた中高年男性ばかりに偏っています。若い世代は少なく、衆議院で女性は1割ほどしかいません。
偏りがあっても、政策にきちんと民意が反映されるならば、それほど大きな問題ではないかもしれません。しかし、民意が反映されているとは言いがたいのが現実です。
――確かに内閣府の世論調査では、「国の政策に国民の考えや意見がどの程度反映されていると思うか」という問いに、「あまり反映されていない」「ほとんど反映されていない」と答えた人が合わせて7割を超えています。
海外の実証研究では、具体的なメカニズムはまだわかっていないものの、選挙で選ばれた政治家は、特に経済政策において富裕層が好む政策を実現する傾向にあることが示唆されています。
裏金は確かに問題ですが、根本的な問題は、派閥のパーティーの仕組みのように「企業などお金のある人たちだけが政治に影響を与えられて、困っている人たちの声は聞かれない」という構造にあります。
恵まれた人たちが議員に選ばれ、恵まれた人たちの意見を政治に反映する。それが選挙による民主主義の実態に近いかもしれません。
こうした政治の問題を改善する一つの手段が「くじ引き」なのです。
投票率上がれば「さらに偏る」?
――確かに現状には問題が多いですが、「選挙で一人一票を投じる」ことが民主主義の基本ではないのでしょうか。
確かに選挙は重要です。しかし、選挙だけで適切に民意を反映するのは難しいと私は考えています。
たとえば、政治学で古くから…
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