「受診が不安」なくすため 性的少数者への理解進める医療現場のいま

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川野由起

 LGBTQ+(性的少数者)の当事者が、医療機関の受診を不安に感じ、ためらうことがある。受診の際に、外見でジェンダーを決めつけられたり、異性愛者であることを前提に話をされたりすることがあるためだ。こうした現状を改善しようと、医療現場の取り組みが進んでいる。

 性的少数者の若者支援に取り組む認定NPO法人「ReBit(リビット)」の調査(2023年。有効回答961人)によると、性的少数者のうち41・2%が精神障害の経験があると回答。一方、行政・福祉関係者に「セクシュアリティーについて安心して話せない」と95・4%の人が回答した。医療関係者に対しても81・3%の人が「安心して話せない」と答えた。

 「医療者からLGBTQでないことを前提とした質問や発言を受けた」「心身の体調が悪くても病院に行かなかった」「健康診断などの予防医療に行かなかった」といった回答もあった。

 一般社団法人「にじいろドクターズ」代表理事の坂井雄貴医師は「差別や偏見、伝統的な家族観や制度が残るなかで、知識がないまま診療にあたる医療者も多い」と話す。

 同法人は医療従事者に対し、性的少数者と医療について研修などを実施している。研修では、オールジェンダートイレの用意▽問診票の性別欄をなくしたり、男女以外の項目を加えたりするなどの見直し――の重要性を説明している。

 診察の際には「夫、妻」ではなく「パートナー、配偶者」といったジェンダーにとらわれない言葉を使う▽性的指向について患者から相談されたときに、本人の許可なくカルテに書き込んで多くの人が閲覧できる状態にしたり、院内の会議で話したりするのは、「アウティング(本人の許可なく公表すること)」になりうるため注意する――ことなども呼びかけている。

 大人だけでなく、子どもの当事者から相談があったときに対応できるように、小児科医や地域のかかりつけ医などの理解も重要だ。だが、坂井さんは「理解が必要だと何となくわかっていても、当事者が何に困っているかわかっていない医療従事者は多い。性的少数者を含めたあらゆる患者が医療を利用しやすいような配慮について、スタートラインにも立てていないような病院も多いのが現状だ」と指摘する。

記事後半では、性的少数者への理解を示す全国の医師をマップにした製薬会社の取り組みも紹介します。

「誰も置き去りにしない医療を」

 千葉県館山市にある「亀田ファミリークリニック館山」。5年ほど前から、医師が集まって自主的な勉強会を始めた。看護師や事務職員を含め、理解を深めてもらうための研修をしている。

 問診票の性別欄はなくした…

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この記事を書いた人
川野由起
くらし科学医療部
専門・関心分野
こどもの虐待、社会的養育、アディクション