増える昼の線路の保守工事、なぜ? JR山陽線の現場をみた

向井光真
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 県内のJR西日本の路線で、昼の時間に線路の保守工事をすることが増えている。終電から始発までの深夜帯ではなく、昼間にわざわざ列車を運休させて工事を実施するのはなぜか。公開された「昼工事」の現場を訪ねた。

 11月13日午前、JR山陽線の島田―光間の場正(ばしょう)第1踏切(光市)。約500メートルにわたって下り線のレールを取り換える工事があり、周辺自治体の交通担当者や高校で進路指導を担当する教員らが見守った。鉄道に関するイベント活動「鉄カツ」と称した見学会だ。

 この区間は、JR西日本中国統括本部の徳山保線区が保守を担当する。同社のグループ会社など7社の約80人が作業に携わった。枕木から外した古いレールを「山越し器」でつり上げ、脇によけていった。

 古いレールの長さは25メートルだったが、新しい「ロングレール」は約500メートル(重さ約30トン)。継ぎ目が減り、走行中の「ガタンゴトン」という揺れが少なくなる。

 中国地方でJR西の昼間の保守工事が公開されるのは初めて。見学した下松工業高の嶋村秀司主任は「関連会社の協力の下、作業が行われているのを見て勉強になった。当たり前のように電車で安全に移動できるのは、こういう作業が土台にあるからだと生徒に伝えたい」と話した。今月18日昼、宇部市内の山陽線の工事で2回目の見学会が開かれた。

 同本部は2020年4月、山陽線で昼間の大規模保守工事を開始した。貨物列車の運休が多い月曜日に行い、23年度は20年度の倍の18回、山陽線で実施する。列車の本数が少ない美祢線や山陰線、山口線などでも昼間の工事をしている。

 同本部によると、従来の保守工事は、列車運休の影響を避けるため、終電から翌日の始発までの深夜帯に実施してきた。ただ、夜は工事のできる時間が短く、貨物列車が通過する路線では1時間半~2時間で区切り、少しずつ進めざるを得ないという。また、夜の作業に従事する担い手も不足している。

 一方、昼の工事の場合、明るい中で安全性が高い上、列車を一時運休することになるものの数時間続けての工事が可能で、工期短縮が図れるメリットがある。経費削減になり路線の収支改善につながっているとみられる。

 実際、11月13日の工事は上下線で計9本を運休させて約4時間かかったが、夜間なら作業時間の確保や人繰りが難しいため、日程が飛び飛びになり、約1カ月かかる工事になるところだったという。

 とは言え、保守工事の約9割は依然として夜間帯に行われている。利用客の理解を得ながら、可能な限り昼の工事を実施していきたいとしている。

 業者側はどう受け止めているのか。工事を請け負ったことがある業者に記者が聞くと、「安全性が高まり、まとまった時間がとれることで効率的な作業ができる」と評価する意見の一方、「工事単価が安くなったり、作業者の夜勤手当が減ったりして、もろ手を挙げて喜べない面もある」との声があった。

 徳山保線区の加島敏博区長は「利用客にご迷惑をおかけするが、昼間に一気に工事をやることで早く安全な設備を提供できることにつながるので、ご理解頂きたい」と話している。(向井光真)

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