「命の価値を収入で決めないで」犯罪被害者支援、見直し議論の現在地

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甲斐江里子 編集委員・吉田伸八

犯罪被害者や遺族に支払われる国の給付金について見直し議論が進んでいます。きっかけの一つは、大阪市北区で26人が犠牲となった心療内科クリニックの放火殺人事件。被害者の多くが休職中や無職で、収入がなければ給付額が低くなる算定方法の見直しを遺族らは求めています。

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 「夫は無職とひとくくりにされ、価値を決められた」。10月15日、兵庫県尼崎市で開かれた「犯罪被害補償を求める会」(神戸市)のシンポジウム。約80人の聴衆を前に、2021年12月17日に起きたクリニック放火殺人事件で、夫を亡くした女性が国の犯罪被害給付制度への不満をあらわにした。

 夫は会社員として働いていたが、過労で体調を崩して退職。事件現場のクリニックに通い、復職を目指していた。事件直前には女性に「これからどんな風に働いていくか道筋が見えた」とも話していたという。

 事件当日の夜、女性は遺体の身元確認に訪れた警察署で給付制度の案内を渡された。「犯罪被害を早期に軽減する」「再び平穏な生活を営むことができるよう支援する」。こんな文言と専門用語が羅列されていたが、最愛の夫を突然失った女性には「小さな光」のように感じられたという。

 だが、2週間後、期待はしぼんだ。制度について問い合わせた窓口でこう伝えられたという。「無職なら給付額が低くなりますよ」

窓口で聞いた思いがけない言葉

 犯罪遺族への給付金は、事件…

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