米国側「姉妹公園協定、G7中に締結を」 広島市の開示文書で判明

魚住あかり 柳川迅
[PR]

 広島市平和記念公園と米ハワイ州のパールハーバー国立記念公園の姉妹公園協定をめぐり、米国側が主要7カ国首脳会議G7サミット)期間中の締結を打診していたことが、市への情報公開請求でわかった。開示文書では、サミットが1カ月後に迫る中、締結に向けた準備を急ぐやりとりが記されていた。

 「平和記念公園とパールハーバーがシスターパーク(姉妹公園)となるよう話を進めたい」。市の開示文書によると、在大阪・神戸米国総領事館から電話があったのはG7広島サミットが約1カ月後に迫った4月6日のことだった。米側は「シスターパークとすることは米国政府の意向」「理想としては、G7で署名できること」と伝えた。

 同月14日の協議には、リチャード・メイ・ジュニア総領事らが参加した。「(両公園は)悲劇的歴史の経験を通じ、どちらも将来に目を向け、世界の平和を達成することを目的としている」。そう主張した上で米側は「G7広島サミットの期間であれば大きなインパクトがある」「残り1カ月だ。市長に迅速に話を上げていただきたい」と求めた。

 市側は「(両国の市民が)納得できるもの」を目指すとした上で、「この数週間で行うことの技術的な困難度をどうクリアしていくかだ」と応じていた。

 また米国側は5月11日の協議で、平和記念資料館で協定書に調印することを提案。「セキュリティーが確保されており、メディアも集まりやすい」としていた。

 ただ実際には協定は、東京の米国大使館でサミット後の6月に結ばれた。「急であるということは、職員も含めてみんな認めていた」と松井一実市長は11月、市長会見で振り返った。サミット期間中の締結を見送った理由については「(米側から日程調整の)連絡が来なかった」と説明。期間中の締結そのものについては「構わないと思っていた」とした上で、「(日程より)和解と未来志向ということを言えるものになるか心配していた」と話した。

 一連の経緯を受け、市民からは不信感を訴える声も上がる。市の9月議会では、市議の「協定は原爆投下核抑止論を肯定するのでは」という質問に対し、市局長が「原爆投下に関わる米国の責任の議論を現時点では棚上げする」と答弁する場面もあった。

 先月14日、市へ協定の意図を問う質問状を提出した「教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま」の岸直人さん(69)は取材に、「突貫工事で結んだ協定だ。サミットを盛り上げ、核抑止政策を認めさせるという米国の意図を感じる」と話した。(魚住あかり)

 広島市の松井一実市長は1、2日に米ハワイ州を訪れた。平和記念公園と姉妹公園協定を結んだパールハーバー国立記念公園のトム・レザーマン管理監督者と面談し、市側から青少年の交流事業や公園での原爆企画展など今後の交流について提案した。

 市国際化推進課の野坂正紀課長が7日、報道各社に訪問結果を説明した。

 説明によると、松井市長は米ニューヨークであった核兵器禁止条約第2回締約国会議に参加後、公園のあるハワイ州ホノルルへ。

 レザーマン氏との面談では、広島市の青少年のパールハーバー訪問とホノルルの青少年の平和記念公園訪問▽被爆樹木の苗木や種と日本軍真珠湾攻撃時から付近に生えている「証言樹木」の交換▽広島市の原爆企画展、を提案した。パールハーバー側からの提案はなかったという。

 公園の視察で松井市長は真珠湾攻撃で沈んだ艦船の名にちなむアリゾナ記念館とユタ記念碑、オクラホマ記念碑、ビジターセンターを訪れた。佐々木禎子さんをテーマにしたミュージカルを上演する現地の劇団「オハナアーツ」とも交流した。ホノルルのリック・ブランジャルディ市長とも面談したという。(柳川迅)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【本日23:59まで!】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら