芸備線の再構築協、知事は参加否定せず 廃線議論の加速に不安も
岡山県新見市と広島県庄原市の間を走る芸備線の一部区間の存廃などを話し合う「再構築協議会」について、岡山県の伊原木隆太知事は21日、新見市主催の既存の法定協議会を協議の場として提案したいとしつつ、国が再構築協議会を設けた場合は参加する意向を示した。新見市も同様の意向で、県市とも議論の主導権を握り、廃線議論が再構築協で加速するのを避けたい考えだ。
JR西日本が10月、備中神代(新見市)―備後庄原(庄原市)間について再構築協議会の設置を国に要請。国は再構築協への参加の可否について、岡山、広島両県と新見、庄原両市の意見を聴取。4県市が回答期限の延長を求めた結果、27日までの回答を求められている。
伊原木知事は21日の会見で「県域について再構築の協議を始める」とした上で、新見市がかねて設置している法に基づく協議会「新見市地域公共交通会議」での議論を希望すると明らかにした。市主催のこの法定協は住民や学識者、バス事業者、JR岡山支社などで構成され、地域交通網の整備について随時協議している。
県はこれまで、JR西側が求める存廃も含めた議論を拒否し、利用促進に限った議論を求めてきた。伊原木知事は市の法定協での議論を求める理由として「地元が受け入れがたい結論になることは避けたい」などと説明した。10月に施行された改正地域公共交通活性化再生法は再構築協への国の財政的関与などを定めており、「スタンダードができた。その精神を、ぜひ今ある法定協に適用して頂きたい」とも語った。
ただ、国が再構築協を設置した場合は「再構築協議会に参加することにする」と述べた。
路線の存続を強く望む地元、新見市の戎斉(えびすひとし)市長もこの日、市の法定協での議論を希望する談話を発表。「芸備線は市の公共交通体系の骨格をなす基幹交通。市全体への影響について十分に考慮する必要がある」とし、法定協は「公共交通全体について幅広く議論する場であり、地域で主体的に協議を行うことができる」と指摘した。一方で、国が再構築協を設置した場合は、県と同様に参加する考えも示した。
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一方、広島県側は意見聴取の回答内容について「最終的な検討を続けている」として明言を避けた。
広島県の湯崎英彦知事は21日の会見で「岡山県の判断なので意見を言うべきではない」とした上で、「それぞれ地域の特徴や実情は異なるので、意見や考え方が異なる部分が出てくるというのは当然のことかなと思う」と述べた。
広島県と庄原市はこれまで、対象区間以外の沿線自治体も含めた広範囲での議論を訴えてきた。庄原市の担当者は「鉄道のネットワークを守っていく広域的な取り組みと、日常利用に向けた取り組みの二つの側面がある」として、議論内容に応じた協議の場が必要だとする。新見市の法定協についても「呼びかけがあれば一緒に取り組みたい」と話した。
伊原木知事の発言について、国土交通省中国運輸局の担当者は取材に対し、「岡山県から参加の方向性が示されたと受け止めている。今後、広島県からの意見を踏まえて、再構築協を設置することが適切かどうかを検討していく」と語った。県境をまたぐ区間について議論をする場合、沿線自治体が個別に設置した法定協よりも、広域的な再構築協の方が望ましいと、国は判断するとみられる。
ただ、岡山県が今回、一義的には個別の法定協を望んだ背景には、再構築協のみで議論を行うと、JR西や国のペースが優先され、沿線の地域事情が置き去りにされてしまいかねないという不安がある。岡山県は、国が再構築協の設置を決めた場合は「岡山県と新見市の意見が十分に反映されるような協議体制とすること」を求めている。
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