JRが磨き上げた技術で新ビジネス続々 スッポン全滅の過去乗り越え

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細沢礼輝

 パクチーに金属バット、ひっかき傷に強いソファ――。JR各社が新ビジネスを続々と生み出している。スッポン養殖やシメジ栽培などに手を出して失敗した過去もあるが、今回は磨き上げてきた鉄道技術を生かしているのがミソ。コロナ禍からの需要回復が頭打ちとなるなか、輸送以外の収入源を探る取り組みだ。

 新潟県内のスーパーなどでは7月から、「めかぱく」と名付けられた香草のパクチーが並ぶ。生産者は、JR東日本の改札や空調設備などを手掛ける「JR東日本メカトロニクス」(本社・東京)だ。

 新潟市内の工場の一角で、水耕栽培のプラントが稼働を始めたのは2月。LED照明に照らされた栽培棚は温度や湿度、明るさが常に管理され、pH(水素イオン濃度指数)や肥料がコントロールされた水耕液が循環している。

 この技術を支えるのが、豪雪地帯を走る新幹線でスプリンクラーなどを使って線路上の雪を溶かす消融雪システムだ。気象状況に応じて、水量や水温をきめ細かく管理し、循環させる技術が応用されている。

 1日の収穫量は7~8キロ。露地栽培と比べて日持ちがすると評判で、首都圏への販路拡大もめざしているという。同社技術サービス創造部は「将来的には作物だけでなく、栽培プラントの設備を売り込んでいきたい」と意気込む。

スッポン全滅、トンネルでシメジの苦い過去も

 実はJR各社にとって「新ビジネス」には苦い過去がある。1987年の国鉄分割民営化後、様々な新規事業に手を出したが、多くが失敗に終わったという。スッポン養殖は共食いで全滅し、使っていないトンネルを活用しようと考え出したシメジ栽培も、販路の確立ができないなどの理由で廃業した。

 当時を知るJR幹部は「意欲は高かったが、採算性や販路の見通しがあまりに甘かった。最近の事業は長年磨き上げてきた鉄道技術の応用で、手堅いビジネスだ」と自信をみせる。

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 応用されている鉄道技術は多…

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この記事を書いた人
細沢礼輝
東京社会部|鉄道担当
専門・関心分野
鉄道を中心とした運輸部門