工場建設きっかけ、地中から埋蔵銭10万枚超 戦乱で急きょ埋めたか

角津栄一
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 前橋市総社町の「総社村東03遺跡」の発掘調査で、紀元前の中国初の統一通貨「半両銭」や、7世紀から13世紀にかけて造られた渡来銭など10万枚を超す大量の埋蔵銭が見つかった。藁紐(わらひも)で約100枚ごとにまとめた「緡(さし)」の状態だった。藁の袋に入れられており、中世期の戦乱などで急きょ地中に埋められたと見られるという。

 事業者の工場建設を機に発掘調査が行われた。市によると、埋蔵されていた範囲は、縦約60センチ、横1メートルで、約100枚単位の緡が1060見つかった。10緡にまとめた1貫文(約1千枚分)にして納められた痕跡も確認された。稲わらのむしろが残っており、この中に入った状態で埋められたとみている。

 遺跡の所在地は、総社町総社大字大屋敷で、字名から、大きな屋敷があった可能性も考えられるという。

 埋蔵銭のうち334枚を調査したところ、中国の前漢時代から、南宋時代までの通貨44種類が確認された。通貨の初鋳造年代は紀元前175年から1265年までとされる。

 最も古いものは、前漢時代、紀元前175年初鋳造の「半両銭」が1枚確認された。直径2・3センチ、中央部分の四角い穴は一辺7ミリ、厚さ1ミリ。表面の左右に文字が描かれ、左は「両」、右が「半」。

 最も新しい銭は南宋時代の1265年初鋳造の通貨。このことから、埋蔵時期は、鎌倉時代(1185~1333年)と考えられるという。ただ、サンプルで調べた枚数が少なく、今後の調査によって埋蔵年代が変わる可能性もある。

 市によると、この遺跡の約1キロの範囲に、総社古墳群や、山王廃寺、上野国分寺などがあり、この遺跡のあるエリアは、古墳時代から律令期にかけて上野国の中心地域だったと見られる。

 総社村東03遺跡の出土品は、2022年度に前橋市内で行われた発掘調査の成果を紹介する「新出土文化財展2023」で展示されている。ほかには、古墳時代後期の円墳から出土した大刀(たち)や、象嵌(ぞうがん)と呼ばれる技法が施された「銀象嵌鍔(ぎんぞうがんつば)」、古代群馬の中心地域であった「上野国府跡推定地」から出土した古代の土器や陶磁器も展示される。

 会場は臨江閣(前橋市大手町3丁目)で、12日まで。無料。問い合わせは、前橋市文化財保護課(027・280・6511)。(角津栄一)

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