中学受験で厳しい叱責、後に暴力や自傷の恐れ 教育虐待の深刻な影響

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聞き手・高浜行人
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 父母を殺害したとして、元九州大生の長男(19)が9月、佐賀地裁で懲役24年の判決を受けた。判決では、成績を巡る父親の暴行が背景にあったと認定された。受験などを巡る「教育虐待」を防ぐため、保護者が心掛けるべきこととは。支援のあり方は。教育虐待に詳しい小児精神科医の古荘純一・青山学院大教授に聞いた。

 ――そもそも教育虐待とは、どのような行為を指しますか。

 子どものやりたいことを考慮せず、保護者が一方的に教育やしつけを押しつける行為です。体罰はもちろん、能力を超える目標を強いたり、厳しく叱責(しっせき)したりするのが典型例です。行為の内容によって、心理的虐待や身体的虐待、ネグレクトなどにあてはまる可能性があります。

 特徴的なのは、保護者が虐待をしているとの自覚がないケースが多いことです。受験で目標を達成するには厳しい指導が必要で、本人のためだと思い込んでしまう傾向があります。自身の行為が虐待だと保護者が認めないと、「やり過ぎた」と一時的に後悔しても、テストの結果がよくないといったきっかけがあると繰り返してしまいます。

「いい学校=幸せ」 教育虐待の背景にある価値観

 ――保護者はなぜ教育虐待をしてしまうのでしょうか。

 受験など、期日までに本人の学力などを高めなければならない状況で、保護者が焦りから無理を強いるようになるのが一般的です。背景には、いい学校に入ることが子どもの幸せにつながる、そうでなければ幸せになれないという、保護者自身の硬直した考え方、ゆがんだ考え方があります。優秀な子の親であるという名誉欲と結びついていることも多いです。

 特に小学生は中高生などと比べて親がコントロールしやすく、中学受験が教育虐待のきっかけになりやすいと言えます。その意味で、中学受験熱が高まっている首都圏の状況は気がかりです。

 ――子ども本人が中学受験をしたがるケースもあるようです。

 子どもが望んでいる場合でも、無理に学力を伸ばすような「指導」ではなく、本人が立てた無理のない目標に向けて「伴走」するよう心掛けてほしいと思います。あくまで本人のペースで進み、求められたら支援するイメージです。

 気をつけたいのは、子どもが親の気持ちを察して、親の希望に沿うような発言をする場合があることです。そのように言わないと親から愛されないと思わせてしまっていないか、見極める必要はあるでしょう。

子どもの人生が台無しになりかねない 保護者は自覚を

 ――教育虐待に陥らないために、保護者が心掛けるべきことは。

 親からの厳しい叱責や押しつけの教育はトラウマになりかねず、子どもの人生に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。そのことをまず、知ってほしいですね。

 思春期に非行や拒食、自傷行為、親への暴力につながるケースや、少ないながらも自殺の引き金になるケースもあります。大人になっても対人関係が構築しにくかったり、自己否定を繰り返したりして、その子自身が家庭を持ったときに虐待してしまうこともあり得ます。

 子どもの人生を台無しにするかもしれないと思えば、厳しい指導が「本人のためになる」とは思えないはずです。

記事の後半では、保護者が教育虐待をしないための心構えや、周囲の支援のあり方について語ってもらっています。

勉強以外にやりたいことないか 見きわめ必要

 ――受験が近づくなどして親…

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