林理事長の対応「著しく不適切」 日大第三者委指摘、処分にも言及

高浜行人
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 日本大学アメリカンフットボール部の違法薬物事件で、日大の対応を検証する第三者委員会(委員長・綿引万里子弁護士)が31日、調査報告書を公表した。林真理子理事長や酒井健夫学長によるガバナンス(組織統治)が「全く機能しなかった」と指摘。経営層の責任の明確化と処分の検討を求めた。

 報告書では、昨年11月に部員が自身のほか部員7人の大麻使用を監督に告げ、今年6月30日には警視庁からアメフト部学生寮での大麻使用の情報がもたらされたにもかかわらず、7月13日まで林理事長に報告があがっていなかったとし、「それ自体がまず問題」とした。

 そのうえで、林理事長が同月18日に保護者から、学生寮で大麻とみられる植物片が見つかったのに保管しているのは隠蔽(いんぺい)だと指摘する内容の手紙を受け取るなどしたのに、調査の指示や理事会への報告をしなかったことについて、「著しく不適切な対応」と断じた。

「理事長個人の責任というより組織的対応の問題」

 一方で、「巨大な組織であることに鑑みれば、これは理事長個人の責任というよりは、理事長が正しく判断することができる組織的対応の問題」とも記した。

 酒井学長については、植物片を発見しながら保管した沢田康広副学長の不適切な対応を是正するという監督義務を果たさず、理事会への報告義務も怠ったなどとした。

 林理事長と酒井学長は、田中英寿・元理事長が脱税事件で有罪判決を受けるなどした一連の不祥事からの再生を目指し、昨年7月に就任した。報告書は「田中前理事長の専制体制の破棄を主眼として、学外理事を選任するなど理事会や監事の態勢を刷新したにもかかわらず、これらが十分機能しなかった」とも記した。

 今後のガバナンス改善策をめぐっては、法人の社会的信用が損なわれたとして、「経営層の責任と処分」に言及。事実関係の正確な把握と原因の検討をしたうえで「関係者の責任を明確にすることが必要」と提言。また、元理事長の問題の後の理事長と学長の選任手続きについて、「合理的なプロセスを経ていたかどうかを検証し直す必要がある」とした。

 ただ、法人による自主的な対応が必要だとして、具体的な対応までは示さなかった。

日大「関係者の処分を行う」

 報告書は30日に日大側に送られた。日大は同日、文部科学省に報告書を提出し、「指摘を真剣に受け止め、再発防止策と改善計画を迅速に策定すると同時に、関係者の責任の所在を明確にし、処分を行う」とするコメントを発表した。(高浜行人)

日大第三者委の報告書の骨子

【不適切と認定した対応】

・2022年11月にアメフト部員が同部監督に自身と7人の部員の大麻使用を申告したが、報告を受けた競技スポーツ部長が担当の沢田康広副学長らに報告しなかった

・23年7月、沢田副学長が部の学生寮で大麻の可能性が高い植物片を見つけながら、学内で12日間保管を続けた

・8月、寮での大麻使用の広がりを正確に認識しないまま議論もなく部の活動停止処分の解除を決定

【背景】

・事実を矮小(わいしょう)化し、不都合な情報に目をつぶり、自己正当化するという基本的姿勢の不適切さ

・林真理子理事長や酒井健夫学長によるガバナンスが全く機能しなかったこと

【改善策】

・社会からの信頼をどう得ていくか、行動指針を明確にし、教育機関としての役割を再度徹底する

・経営層の責任と処分について適正な手続きに基づいて決定し、ガバナンスを改善する

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    長野智子
    (キャスター・ジャーナリスト)
    2023年11月1日11時35分 投稿
    【視点】

    「餅屋は餅屋」ということわざが私はわりと好きで、やはり物事はそれぞれの分野の専門家に任せるのが良いと考えています。旧ジャニーズ事務所の最初の会見でも、所属タレントを社長・副社長にして問題の矢面に立たせたことに驚いたし、そこに事務所の特殊性と

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