愛した女は常習窃盗犯だった 4度の服役、止められなかった夫の覚悟

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中山直樹

 愛した女は、窃盗の常習犯だった――。何度注意しても万引きをやめず、刑務所暮らしを繰り返した。夫はついに、仕事をやめ、妻の「病」と正面から向き合うと法廷で誓った。

 「もうお互いに残りの人生は長くない。依存症の病院に入院させて、最後まで一緒に生きていく」。証言台に立った夫(71)は、こう言った。

 今年6月、福岡地裁で女(63)の初公判があった。女は仮出所から1カ月後にコンビニでヨーグルト15個を盗んだ罪などに問われていた。起訴内容を認め、その後も、「(ヨーグルトが)あっても困らないと思った」などと犯行の動機などをうつむきがちに答えていた。被告席にいた女が「うっ」と声を漏らして手で顔を覆ったのは、夫の証言を聞いた時だ。その肩は小刻みに震えていた。

 ここに至るまで、女は3度、服役していた。

 裁判で女はまず、夫と出会うまでの過去を振り返った。

 大学卒業後、前の夫と結婚し、3人の娘を出産した。30代前半ごろ、お酒の量が増え始めた。

前夫のDV、株の暴落からアルコール依存 「ストレスで万引きも」

 弁護人「アルコール依存が始まったきっかけは」

 女「住宅ローンとか、娘たちの教育費用がかさんで、仕事も増やさなければならなくなった。ストレスで不眠にもなって、お酒を飲まないと寝られなくなった」

 弁護人「当時の夫とはどんな関係だったのか」

 女「夫が私の両親にきつく当たり、私にも精神的なDVをしてきた」

 弁護人「40代になると、高級ブランド品を買いあさるようになったそうだが、なぜか」

 女「当時の株が当たって、買い物をしていると店員さんの反応が心地よく感じた。娘や母に買った物を譲るのも気分が良くて、どんどん数が増えていった」

 弁護人「2008年のリーマン・ショックで株が暴落し、買い物はやめている。アルコール依存はどうだったか」

 女「外出の機会が減り、家に閉じこもってお酒を飲むことが増えた。さらにストレスから万引きもするようになった」

 弁護人「万引きをすると、ストレスは消えるのか」

 女「不安や押しつぶされそうな圧迫感など精神的な乱れがあって。万引きをするとそれが落ち着くかというとはっきりはわからないが、しばらくすると自己嫌悪に陥ることがほとんどだった」

 弁護人「万引きが見つかって、警察沙汰にならないまでも、娘さんに連絡がいくということもあったと聞く。そのときに万引きをやめようとは思わなかったのか」

 女「思うのですが、衝動が起きてしまう」

穏やかで気が利く女が抱えていた二つの問題 突然かかってきた電話

 14年前、今の夫が店長をしていた飲食店に女がアルバイトとして採用された。夫は穏やかで気の利く女にひかれ、約2年の交際を経て結婚した。

 しかし夫はその時、女が二つの問題を抱えていることに気がつかなかった。

 結婚生活が始まると、まもな…

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この記事を書いた人
中山直樹
ネットワーク報道本部|都庁担当
専門・関心分野
人権問題、災害、人口減