「産めば母性本能、は幻想」 長谷川眞理子さんが考える子育ての前提
東京都は来年度から、妊娠や出産の期間を通して孤立に陥りやすい25歳以下の初産女性すべてを対象に、経済面を含めた手厚い生活支援をする新しい事業を本格的に始めます。都医学総合研究所の客員研究員として、事業の計画づくりや職員の研修に携わっている日本芸術文化振興会理事長の長谷川眞理子さんに聞きました。
私は行動生態学や自然人類学が専門で、タンザニアの野生チンパンジーの生態と行動などを研究してきました。
ここ最近までの人類学の研究成果を踏まえると、ヒトは母親だけで子どもを育てることはできないし、父親だけでもできない。両親がそろえば大丈夫かというと、それでも足りない。
ヒトという生物は、生まれたばかりのころはとても弱い存在で、脳を大きく発達させ、大人に育つまでに学び、覚えないといけないことが山ほどある。
両親だけでなく、周りの人たちが総掛かりで子育てをしなければ、子どもは生きて成長していくことができない。そんなことが分かってきています。
「現代社会では働く女性のために保育所が必要」というとらえ方をする人もいますが、子育てのための支援が現代になって急に必要になったわけではありません。もう何万年も前から、人類は母親だけが子育てを担うような生物ではなかったのです。
むしろ、人類の長い進化の歴史の中では、現代のように両親だけ、とりわけ女性だけに子育ての大部分を任せている時代は極めて例外的なのです。
母親が自分の子どもを捨てた…
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- 【視点】
人間を含め動物は、まわりが出産・子育てに適した環境にあるかどうかを判断しているという長谷川氏の指摘はとても重要だと思う。子育て支援というと育休取得などの対症療法的な政策ばかり並ぶが、出産・育児の前提になっている生物学的な環境を整備しないと出
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