関東大震災で殺された聴覚障害者 生死分けた「15円50銭」の問い
関東大震災の直後に始まった朝鮮人虐殺に関係して、ある日本人の聴覚障害者が殺害されました。この事件が持つ意味を、公益財団法人政治経済研究所研究員の小薗崇明さんに聞きました。
関東大震災の時、朝鮮人が暴動を起こしているというデマが流布され、軍や自警団による虐殺が各地で起こりました。日本人と朝鮮人を識別するために使われたのが「15円50銭」という言葉です。発音できるかが生死の境になりました。
語頭の濁音を発音しない朝鮮語の特徴を前提に、朝鮮人なのか問うものとして生まれましたが、現実には、それは「標準語」を話せるか否かの問いであり、それを話すことができる「日本人」なのかを問うものとして機能しました。実際に、秋田や沖縄などの地方出身者も、朝鮮人とみなされて殺されました。
そうした中、1人の聴覚障害者が殺害されたことを私は確認しました。東京聾啞(ろうあ)学校卒業生で、浅草で朝鮮人と間違われて、自警団に殺害されたと、当時報じられています。司法省の記録もあります。聞き取りや発話に困難さを抱える聴覚障害者にとって、「15円50銭」の問いに答えるのはむずかしかったでしょう。
研究されなかった障害者の被害
平時にはろう学校や地域など…
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- 【視点】
「語られるべきことが語られず、記録されなかったことで、結果的にタブー視され、さらに忘れられていく。殺害された聴覚障害者は二度、殺されたと言えるかもしれません」。小薗氏の発言から、先月末の松野官房長官の発言を想起した。松野氏は記者会見で、震災
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