新幹線「静岡空港駅」構想が再浮上 リニア推進派、静岡の軟化狙う?

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黒田壮吉 中村純
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 リニア中央新幹線の静岡工区の着工を静岡県が認めないなか、東海道新幹線の「静岡空港駅」を新設する構想が再び取り沙汰されている。県は関連予算を計上した時期があるなど新駅設置に前向きだが、JR東海側は一貫して否定的だ。一体どんな構想なのか。

 「国際空港と高速鉄道が結節する駅は例がなく、画期的だ。広域にメリットが波及する」

 5月31日、リニア建設を促進する期成同盟会の総会。山梨県長崎幸太郎知事が、高速交通の将来像に関する研究会の案として、静岡空港新駅の構想を披露した。

リニア沿線知事「画期的だ」、JR東海「プラス効果もたらせず」

 研究会は今年1月、リニア開業後の沿線地域の将来像を示し、早期建設の機運を高めるために発足した。長崎知事は取材に「リニアが直接通らない沿線全体にも利益が及ぶという形を作ることが同盟会として重要だ」と語った。今後、各都府県の意見を取りまとめ、国やJR東海に働きかけていくという。

 空港新駅は静岡県にとって長年の悲願だ。静岡空港の建設地が1987年、東海道新幹線が走る榛原町(現牧之原市)・島田市境に決まり、90年前後に新駅構想が浮上。新幹線に直結すれば、首都圏や愛知県と1時間強で結ばれ、「首都圏第3空港必要論」もあり、注目された。自前の有識者会議が駅の候補地を議論するなど、JR東海に設置を求めてきた。

 2009年の空港開港翌月に川勝平太知事が就任。その後、東日本大震災が発生し、リニア建設も決まった。大規模災害時に成田・羽田の代替空港にもなり得るなどとして、県は14年度から6年間、調査費など計約4750万円を計上。新駅の建設費を約400億円と独自に試算し、「(技術的にも)空港直下に建設可能」と結論づけた。

 だが、JR東海は掛川駅と約16キロしか離れておらず、現在のダイヤ構成を保てなくなるなどとして一貫して難色を示している。6月初旬、丹羽俊介社長は会見で、「既存の駅からの距離が短く、高速で都市間を結ぶ東海道新幹線の性能が発揮できなくなる。プラスの効果をもたらすことにはならない」と話した。

 今回、空港新駅構想が再浮上したのは、静岡県が求める静岡空港駅について建設の機運を高めることで、リニア工事に対する態度を軟化させようとの思惑も見え隠れする。リニアは静岡県の最北部をかすめるだけで、沿線7都県で唯一駅がない。知事は「関係ない」と否定するが、着工同意の取引材料として、空港新駅を念頭に置いているとの見方も根強い。

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