ふすま、張り替えます! 東大襖クラブ、「生活の足しに」から69年

江戸川夏樹

 東京大学に異彩を放つクラブ活動がある。「東大襖(ふすま)クラブ」。来年70年を迎える歴史あるサークルだ。部員は1年間の練習を経て、お客さんの自宅で、ふすまや障子を張る。お金をもらっての仕事でもあり、学生たちは「緊張する」と口をそろえる。

 7月、東京都世田谷区の一軒家に学生4人が集まった。朝から夜7時まで、10枚近くのふすまを次々と張る。ふすまに合わせて紙を切り、張った後にカッターで微調整。空気が入らないように、切ったところが汚くならないように……。

 頼んだのは68歳の女性。学生たちは、休憩中には「弁護士を目指す」などと、将来の目標を話してくれたといい、女性は「世界で起きる戦争を止めてねなんていう話もして、あっという間の一日だった」。

「生活の足しに」と1954年に創部

 創部は1954年。大学近くの職人が「生活の足しになるから」とふすま張りの技術を教えてくれたことが始まりだ。現在の部員数は20人ほど。4月に入部した場合、先輩学生による講習会や10回以上の実技演習を経て、次の年の2月ごろにデビューする。

 文科Ⅲ類2年の西村美咲さんは3月にデビューした。「お金も稼げる。面白い」と入部したものの、演習は厳しく、「身が引き締まった。だからお客さんに信頼してもらえる」。法学部3年で部長の坂上碩崇(さかじょうひろたか)さんは「手を動かす仕事に興味があった」と話す。ただ、実際に張る作業は「とにかく難しい」と言う。

 油断するとしわがよる。表面に汚れがつく。線がまっすぐにならない。お客さんは3千種類のふすま紙から好きな柄を選ぶが、中には金や銀の高級な紙もある。「非常に緊張する」

 クラブが依頼を受けるのは年100軒ほど。30年ほど前は200軒以上から依頼があった。「ふすまがある家も少なくなっている。ただ、例えば市松模様は無限に続くことから、『永遠』『繁栄』を願って注文する依頼者は多くいる。なくすのはもったいない文化です」(江戸川夏樹)

 「東大襖クラブ」に張り替えを頼むには?

 料金は材料費と作業代、交通費。一般的な価格よりも3~5割ほど安いという。障子1枚からでも依頼可。対応エリアは東京、神奈川、千葉、埼玉だが、大型連休で帰省中の学生などが対応できる地域も。その際は、交通費など要相談。依頼や詳しい説明は以下。

電話03・3816・1384 

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