鉄道設備のメンテナンスを省力化へ JR四国が鉄道総研と共同研究

福家司
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 JR四国鉄道総合技術研究所(東京)は今夏から、デジタル技術を活用した鉄道設備のメンテナンスの省力化・省人化の共同研究に取り組んでいる。従来は個別に分析していた車両や線路など同じ場所の複数の検査データを組み合わせて分析し、効率的なメンテナンスを目指す。

 鉄道総研は2020年ごろから、同じ場所の車両、線路、土木構造物、電気・信号設備など複数の検査データを横断的に分析することができる「統合分析プラットフォーム」の開発を手がけている。

 ある分野の検査結果の異常が他の分野の異常にも関係していることがわかれば、より早く異常や劣化の兆候を検知できる。たとえば、線路の不具合の兆しを車両の走行測定データの分析で検出することで、従来のような徒歩での巡視や人による検査を減らすことが可能になるという。

 今回は、JR四国の数線区で、同じ場所で測定された複数のデータを入力する。鉄道総研によると、このプラットフォームに営業路線のデータが入力されるのは初めて。JR四国は、今回の分析で得られたデータから新たなメンテナンスの業務手順書を作り、同業他社にも提供する考えだ。研究期間は25年3月まで。

 JR四国は、「中期経営計画2025」(中経)で「省力化・省人化による生産性向上」を掲げる。一方で、鉄道総研も「基本計画RESEARCH2025」で「デジタル技術による鉄道システムの革新」を掲げている。

 JR四国の長戸正二専務・鉄道事業本部長は「中経に示す検査・修繕の効率化は必ず達成しなくてはならない課題だ。少子高齢化など厳しい環境のもと、鉄道総研との共同研究という形で鉄道メンテナンスの抜本的変革に向けた取り組みを進められることは、大変ありがたい。分野を超えた形で新しいメンテナンス手法を構築できるよう、取り組んでいく」とコメントした。

 鉄道総研の古川敦理事は「今後の鉄道事業の持続的な運営には、メンテナンス経費の削減が大変重要だ。共同研究によって、新たなメンテナンスの方法を開発し、鉄道事業者が実務で活用していただけるよう、取り組んでまいりたい」とコメントしている。(福家司)

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