「自己研鑽、長時間労働の隠れみの」 過労医師の遺族、国に改善要望

枝松佑樹

 神戸市の病院に勤めていた医師(当時26)が昨年5月に自殺したのは長時間労働が原因だと労災認定された問題で、遺族らは31日、国に対し、病院に是正勧告して労働環境を改善させるよう求めた。

 亡くなったのは、甲南医療センターに勤務していた高島晨伍(しんご)さん。母の淳子さん(60)と兄(31)が東京の厚生労働省を訪れて嘆願書を提出した。また、小児科医だった夫を過労自殺で亡くした中原のり子さんとともに「医師の過労死遺族の会(仮称)」を立ち上げた。

 高島さんが亡くなる直前の昨年4月の時間外労働は約200時間だった。病院側は、知識や技能を習得するための「自己研鑽(けんさん)」も含まれ、すべてが労働時間ではなかったと主張。遺族側は、病院側の独自の基準では診療以外のほとんどの業務が自己研鑽となりかねないと反論している。

 勉強や手術の振り返りなどの自己研鑽は、労働に該当するか判断するための明確な線引きがなかった。一方、来年4月から「医師の働き方改革」が始まれば、勤務医の時間外労働は、休日労働を含めて原則年960時間に罰則付きで規制される。

 厚労省は2019年7月、医療機関が正確に労働時間を把握できるようにするため、判断の指針を通達した。上司の指示があれば業務と関係ない勉強でも労働にあたり、一方、業務上必要ない論文作成を上司の指示なくおこなえば労働にあたらない、などとした。

 嘆願書の中で遺族は厚労省に対し、「自己研鑽に関する通達を無視し、自らの正当性を主張する病院が存在している」として重く受け止めるよう求めた。高島さんの兄は記者会見で「自己研鑽が(長時間労働の)隠れみのになり、若い医師が苦しむようなことはなくなってほしい」と訴えた。(枝松佑樹)…

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