大量生産・大量消費型のファストファッションの縫製工場で、劣悪な環境と低賃金で働く女性らを描いた映画「メイド・イン・バングラデシュ」(2019年)が23日、神戸女学院大学(兵庫県西宮市)で上映される。同国から監督を招き、日本語字幕の制作を担った同大の教員や学生らが、ファッションを通して世界的課題を語り合う。

 同大文学部英文学科が来年4月、国際学部英語学科とグローバル・スタディーズ学科に生まれ変わることを記念した催し(朝日新聞神戸総局など後援)として開かれる。

 映画は、安い労働力を求めグローバル企業が押し寄せるバングラデシュでの、実話に基づく物語。有名ブランドなどの衣料品供給を低賃金で支える女性たちの葛藤と、労働法を学んで労働組合結成に奮闘する姿を描く。

 日本では2020年3月、大阪アジアン映画祭の特別招待作品部門で初めて上映された。この時、日本語字幕を担当したのが同大英文学科の学生たちだ。文化人類学が専門の英文学科准教授、南出和余さん(48)がバングラデシュでフィールドワークをしていた縁から、話が舞い込んだ。

 同年2月、学生30人が物語の背景を学び、2人1組で約6分ずつ、ベンガル語の映画の英語字幕をまず日本語に直訳。同学科で英日翻訳を教えるスーザン・ジョーンズ准教授も加わり、「1秒4文字」とされる映画字幕のルールに沿って表現を直し、声に出して読み合わせた。

 「この場面はもっと緊迫した言葉がいい」などと意見を出し合い、最後に原語のベンガル語とずれがないか、南出さんが確認した。

 映画祭後は、微修正した字幕で昨年4月から日本全国で劇場公開されている。

 字幕制作時2年生で現在会社員の井下清楓さん(23)は「映画祭でエンドロールに自分の名前を見つけた時、結構すごいことをしたなと達成感があった」と振り返る。

 制作後、大学主催のスタディーツアーで現地の縫製工場を見学した。授乳室や祈りの部屋など女性が働きやすそうな設備が整っていたが、工場内に入った瞬間、繊維のほこりで目が痛くなったという。有名ファストファッションブランドのタグがついたジーンズが、作られていた。

 「服を買わなければいい、という選択では、服を作って生計を立てている人にとって解決の糸口は全く見えない。どうしたらいいのか」。卒業論文で、サステイナブル・ファッションの可能性を考えた。

 井下さんは、映画のモデルとなった、ダリヤ・アクター・ドリさんが映画祭で来日した際、交流した。ダリヤさんが「映画は95%、自分の経験をリアルに描写している」と語っていたことが印象に残っている。

 残り5%を「夫の態度はもっとひどかった。労組の立ち上げはもっと大変だった」と話したという。

 今回、映画祭や全国公開時にコロナ禍で来日がかなわなかったルバイヤット・ホセイン監督(42)を同大が招き、映画に込めた思いを聞く。

 南出さんは「働く仲間との関係性や階層が違う者同士の連帯など、女性のエンパワーメントに注目してほしい」と話す。

 イベントは午後2時から。先着300人、参加無料。同大ウェブサイト(https://e.kobe-c.ac.jp/event/1566/別ウインドウで開きます)から事前申し込みが必要。(中塚久美子

関連ニュース