第2回「もうダメだなどと日銀が言うな」強気のリフレ派、物価上がらず退潮

有料記事異次元緩和 11年目の真実

土居新平
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 日本銀行が7月31日に公表した2013年1~6月の金融政策決定会合の議事録で明らかになったのは、積極的な金融緩和で経済成長を目指す「リフレ派」のメンバーが異次元緩和の導入を主導していたことだ。

 黒田東彦総裁(当時、以下同)とともにその大役を担ったのは、リフレ派を代表する論客で、経済学者だった岩田規久男副総裁だ。「金融政策のレジームチェンジ(体制転換)」を訴えた安倍晋三首相に抜擢(ばってき)され、会合で緩和に強気な姿勢を示し続けた。

 黒田総裁の就任後初めてとなる13年4月3、4日の会合。主題は、どんな金融緩和をどのぐらいの規模で始めるかだった。黒田氏が「量・質ともにこれまでと次元の違う金融緩和を行う必要がある」と口火を切ると、政策委員が賛同や懸念を表明していった。

 発言の機会が回ってきた岩田副総裁は、それまでの日銀の姿勢を批判した。

 「これまで日本銀行は必ずしも目標を数値で示した訳でもなく、また目標を数値で示してもコミットメント(約束)が明確でなかったということが、逐次的に資産購入額を増やしていかざるを得ない状況に追い込まれた一つの要因だったのではないか」

 岩田副総裁は1990年代から、バブル崩壊後の日本経済の低迷の責任は日銀にあると主張。金融政策で最も重要だとしたのは、日銀が流すお金の量「マネタリーベース」(流通現金と日銀当座預金の合計)だ。

 量を増やせば物価は上がるとして、マネタリーベースを金融政策の指標にするよう求めていた。ただ、この主張は学界でも議論があり、日銀内では否定的な見方が少なくなかった。

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 岩田氏は会合で主張を重ねた…

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