第1回フードバンクに乗り付けた真っ赤なBMW 「勝ち組の街」広がる格差
前を歩く白人女性が何かを拾った。
女性は、下を見ながら歩いている。まるで落とし物を捜しているかのように。
たばこの吸い殻だ。ひたすら集め、右手に握ったライターで火をつける。煙を吐き出す。その繰り返しだ。
ジーンズに白いスニーカー。上は黒いコート。どこにでもいる若者のような格好だが、髪の毛がぼさぼさだ。
古びたホテルの背後にある外階段の陰に消えた。マットレスのような白いものが見えた。ここで寝起きしているようだ。
生活困窮者に目立つ若者
ロンドンから鉄道で1時間ほどのコベントリー(人口35万人)。20世紀前半は車づくりで栄えたが、今では情報産業などの高度サービス産業への転換に成功し、英国で最も成長する都市の一つとなった。
作家ジョージ・オーウェルはロンドンからイングランド北部ウィガンへの旅で、最初にこの街を訪ねた。日記にこう残されている。
「1936年1月31日 予定通り列車でコヴェントリーに向かい、午後4時頃到着。ベッド・アンド・ブレックファーストに泊まる。お粗末至極。(中略)簡易宿泊所特有の臭い。薄馬鹿の下女は図体がでかく、頭は小さく、うなじに脂肪がロール状になっている。奇妙なことに、ハムの脂肪を思い出させる」
今となっては記述のような簡易宿泊所を探すことも難しい。
この町を歩いて、私の印象に残ったのは、にぎわう街の隅で、冒頭のように路上生活する若者の姿だった。
中心部の食品店には、屋外に現金自動出入機(ATM)が2台ある。異様なのは、それぞれの真横に布団が敷いてあることだ。そこに若い男性が寝そべり、お金を引き出しに来る人に繰り返し支援を呼び掛けていた。
生活困窮者に食料を提供する「フードバンク」でも、多くの若者に出会った。
「オーウェルの道」の最初の街コベントリーは、現代イギリスの「勝ち組」と言える街ですが、多くの若者が路上生活していました。記事後半では、フードバンクを訪れる若者や運営する側に話を聞きました。
初めてフードバンクに来たと…
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