浄土真宗本願寺派で「お家騒動」 聖典の現代版、取り下げ求め混乱も

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西田健作
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 日本最大の伝統仏教宗派、浄土真宗本願寺派(寺院数約1万)が「お家騒動」に揺れている。今年1月、室町時代につくられた聖典の現代版を大谷光淳(おおたにこうじゅん)門主(46)が示したところ、全国の僧侶や門信徒から不満が続出。指導的立場の僧侶らが、「誤解と混乱を招いている」として総局(執行部)に取り下げを求める異例の事態になっている。

浄土真宗本願寺派

浄土真宗の主な10派の一つ。西本願寺京都市下京区)が本山で、親鸞の子孫にあたる大谷家が門主を世襲している。文化庁の宗教年鑑によると、信者数は約780万人。

 問題になっているのは、「領解文(りょうげもん)」と呼ばれる信仰上の要点をまとめた230字ほどの文章。

 浄土真宗中興の祖・蓮如(1415~99)の作と伝わり、僧侶になるための「得度式」のほか、法要や説法を聞く法座の後などで僧侶や門信徒が暗唱し、自らの信仰を確認してきた。

「教義と異なる」 僧侶ら反発

 だが、室町時代につくられた文章のため、現代では意味が伝わりにくい。過疎化による寺院の減少や門信徒の高齢化が進むなか、幅広い人たちに分かりやすく教えを伝えるために、大谷門主が1月に示したのが、「新しい『領解文』(浄土真宗のみ教え)」だった。

 従来の領解文の精神は受け継ぎつつ、今の言葉で教えを解説する内容で、全国の寺院での唱和を求めた。今春、本山の西本願寺(京都市下京区)であった宗祖・親鸞(1173~1262)の生誕850年を祝う慶讃(きょうさん)法要でも、大谷門主は「社会状況や人々の意識が変わるなか、み教えを誰もが理解できるように、わかりやすく、時代に合った言葉で伝えていくことが、伝道教団である私たちの使命」と呼びかけた。

 だが、派内では文章の内容や唱和を求めることへの反発が広がる。総局が普及に向けて動き出すと、一部の僧侶らが「教義と異なる」とSNSなどで相次いで反対の意見を表明。今春の慶讃法要では、唱和を拒否して退席する僧侶もいた。

 さらに本願寺派の最高位の学者「勧学」と、それに次ぐ司教計33人のうち、過半数となる計19人が文章の取り下げを求める「有志の会」に名を連ねた。代表を務める深川宣暢(のぶひろ)勧学(70)は、5月下旬に京都市内で開いた記者会見で、自分の煩悩と仏のさとりを同一視する部分が特に問題で、「人間は死ぬまで煩悩の中にある存在というのが親鸞聖人の教えだ」などと指摘。門主自身と親鸞を教導者として同一視するように読める部分についても疑問を呈し、「混乱を招いている新しい領解文を総局の責任で早急に取り下げていただきたい」と語気を強めた。

 地域の寺院からも、先祖の代…

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