「すべり台、大人になって滑ると速く感じる」説、卒論で立証

水戸部六美
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 子どもに大人気のローラーすべり台。大人が滑ると、子どものころより速く感じる。でも、学校では「斜面を滑る物体の速さは、質量によらない」とならったはず。一見、教科書と矛盾するこのモヤモヤを立教大の村田次郎教授(素粒子原子核)の研究室の学生(当時)が卒業論文で調べた。

 きっかけは4年前。村田さんが、当時小学1年生の長男と公園で鬼ごっこをしていたときのことだ。

 すばしっこくて、なかなか追いつけないが、途中で長男がローラーすべり台にのぼり、滑って逃げようとすると、そこで必ず追いついた。これは一体どうしたことか……。

 疑問に思ったのは、高校の物理で習う摩擦の法則が頭にあったからだ。法則通りなら「摩擦がある斜面を物体が滑り降りる運動は、空気抵抗が無視できるなら、速さは質量によらない」はずだ。

 そこで村田さんは2021年、このモヤモヤを研究室の学生に卒業論文の研究として調べてもらうことにした。白羽の矢が立ったのが、当時、大学4年生だった塩田将基(しおだまさき)さん(23)だった。

 調べる方法はこうだ。直方体の段ボール箱一つと水を入れたペットボトルを複数本用意。段ボール箱に入れるペットボトルの本数を変えることで、質量を変え、すべり台から滑らせる。

 段ボール箱にはライトを取り付け、滑り降りる様子を動画で撮影。暗闇で光るライトの位置を時間ごとに記録し、速さを割り出す。

 実験の結果、やはりローラーすべり台では、質量が大きい方が明らかに速いことが判明した。またどこまでも加速するわけではなく、どの重さでもそれぞれ一定の速さに落ち着くことがわかった。

 一方、金属板のすべり台は、教科書通り、質量が違っても、滑り降りる速さは同じだった。

 つまり「重い人ほどすべり台で速く滑る気がする」のは、ローラーすべり台に限定された経験則だった。

 なぜ金属板とローラーで結果に違いが出たのか。村田さんは「物体が接触して滑るときと球や円盤が転がるときのブレーキのかかりやすさの違いが理由では」と推測する。

 村田さんは塩田さんの研究を日本物理教育学会の学会誌に塩田さんとの共著論文として投稿した。

 23年1月に、査読前論文を専用サイトにアップすると、1週間ほどで異例の5千ダウンロードを記録した。村田さんは「研究者以外にも、子どもとすべり台を滑ったことがある親御さんや教育者の方も読んでくれたようだ」と分析する。(水戸部六美)

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