女性初の都留文科大学長、加藤敦子さん 「三つの柱」で改革に挑む

池田拓哉
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 都留文科大(山梨県都留市)の学長に4月、女性として初めて就いた。「女性でも責任ある立場で様々なことを成し遂げられる」。そうした姿を学生に示したいと意気込む。県外出身の学生が8割を超え、47都道府県から学生が集う多様性あふれる地方大学ながら、「全国的な知名度が低いのが一番の悩み」という。

 現在も文学部国文学科の教授で、3月までは副学長だった。専攻は日本近世文学。著作に「高畑勲をよむ 文学とアニメーションの過去・現在・未来」(三弥井書店、共著)などがある。

 「都留文大は女性の教員が活躍するという点では先進的な大学と言える。私が学長としてこの場にいるのもその延長線上です」

 教員に占める女性の割合は現在34%。先進38カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本は2020年時点で女性の教員比率が30%と最低だったが、同大准教授として着任した13年にはすでに3割に達していた。

 一方、研究者が集う学会もそうだが、大学運営でも男性主導で物事が進みがちな風潮を感じ続けていた。「学問の世界に限らず時代を変えなくてはいけない」。そんな周囲の期待を意識しているという。

 目指すリーダーシップはトップダウンより、ボトムアップ。学内の様々な立場から広く意見を聞き、学外からの助言も受けて調整し、決断する。そんな形でリーダーシップを発揮したいという。「女性として生きてきたからこそ、そのようなスタイルを身につけたのかもしれませんね」

 都留文大は70年前に山梨県立の教員養成所としてスタートし、短大時代を経て1960年から4年制大学となった。教員養成の伝統は大学の「金看板」となり、全国から学生が集まるようになった。だが、約30年前に約4割だった教員就職率は、最近10年間は約3割で推移。就職先に民間企業や自治体を選ぶ学生が増えている。

 4月上旬の就任会見では「教員養成、地域連携、国際交流という三つの柱において、そのすべてで教育と学びの質の向上を図るための改革を推進する」と力を込めた。

 学生が小学校教員になった時に役立つ、より実践的な学びをどのように提供するか。地域住民や企業と連携を深め、地域の課題を解決に導ける人材をどう育てるか。交換留学制度で学生を送り出すだけでなく、日本語教育などの受け入れ態勢をどう整え、異文化交流を活発化させていくか――。これらを達成するためには大学教員の意識改革も重要と考えているという。

 3月にはVR(仮想現実)などデジタル先端技術の研究教育拠点として「都留ヒューマニティーズセンター」(THMC)が学内に完成し、来年度は学部の再編も予定する。

 「改革の成果が見えてくるまでには時間がかかると思う」。そう考えながらも、自らが唱える教育と学びの質の向上を、数値などのデータで可視化する取り組みにも挑むという。

 8割以上の学生が大学周辺で暮らし、濃密な関係を築くキャンパスライフをかけがえのない環境と考えている。「全国から学生を集めるのは、この大学の基本。そのためにも知名度を上げたい」。大学全入時代に「選ばれる大学」であり続けるため、新たな魅力を打ち出そうと、趣味の水泳で英気を養いながら模索が続く。(池田拓哉)

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