「ノスタルジーではなく現実直視」 赤字ローカル線めぐりJR西幹部

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黒田早織 井岡諒
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 赤字が続くJR各社のローカル線をめぐり、JRと沿線自治体の溝が際立ち始めている。JR西日本の幹部は兵庫県との協議の場で、自らの路線を「地域の皆様から選択されていない」とばっさり。路線維持を要望する県に「ノスタルジーではなく現実直視で」と、激しく迫った。何が起きているのか。(黒田早織、井岡諒)

 県は今年度、通学用の自転車をそのまま鉄道に持ち込める「サイクルトレイン」をJR加古川線で実現できないか、運行本数や積載台数などの検討を始めた。観光目的でのサイクルトレインは和歌山県を走るJRきのくに線などで実施されているが、「通学目的では全国でも珍しい」(担当者)。地元自治体からの発案という。

 西脇市丹波市を結ぶ加古川線は赤字が続いており、新たな施策で利用客を増やすことを狙う。他の赤字路線についても、定期券代・特急代の補助やPRイベントの開催などを検討。今年度、利用促進策に計3100万円を投じる。

100円得るのに1745円

 背景には、「赤字がこのまま続けば廃線につながりかねない」という県の危機感がある。

 JR西は昨年4月、2019年度の輸送密度(1キロあたりの1日平均利用者数)が「2千人未満」と少ない17路線30区間の収支を発表した。兵庫県内は、日本海側沿いの山陰線(城崎温泉―浜坂―鳥取)と、播磨地域周辺を走る加古川線(西脇市―谷川)、姫新線(播磨新宮―上月―津山)、播但線(和田山―寺前)の4路線6区間(地図参照)で、全区間、2018~20年度の営業損益は赤字だった(表参照)。同期間の加古川線(西脇市―谷川)の収支率は5・7%。100円の収入を得るのに1745円のコストがかかる計算だ。

 JRがこの数字を公表したのは、ローカル線の維持費用が経営を圧迫しているからだ。

 「鉄道がどうあるべきかを一…

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    小松理虔
    (地域活動家)
    2023年5月17日14時0分 投稿
    【提案】

    鉄道どうするのか問題は、地方共通の課題でもあり、つよい関心を持って読ませてもらったのですが、「県」対「JR」みたいな構図そのものが、課題の可視化にはつながっても、具体的な解決策について、あるいは本質的な問題について考えるヒントにはならず、記

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