新年度の教員不足「公立小の2割」 大学教授ら調査「子どもの危機」

高浜行人

 新年度を迎えた4月に、公立小中学校の2割ほどで「教員不足」が生じている――。10日、そんな調査結果を大学教授らのグループが発表した。「教員がいないことでダメージを受けるのは子ども。一刻も早い改善が必要」として、背景にある長時間労働の解決やなり手不足の解消に向けた緊急提言を発表した。

 教員不足は、児童生徒の転入により学級数が急に増えるなどして必要な教員数が増えたり、産育休や病休で代わりの教員が必要になったりした際、代役の教員を補充しようとしても確保できず、欠員が生じることを指す。

 調査は今年4~5月、全国公立学校教頭会を通じ、公立小中学校の一部に呼びかけて実施。小学校1243校、中学校542校から回答があった。今年度の始業日時点で教員不足が生じているか聞いたところ、小学校の20・5%、中学校の25・4%が生じていると回答。うち2人以上不足していたのは小学校で4・9%、中学校で7・6%だった。

 不足が生じている学校に、どう対応しているか選択肢を示して聞いたところ、小学校では「本来は学級担任でない教員を充てている」が29・8%と最多。中学校では「(教員の欠員が生じている教科の)免許を保有する教員がおらず、臨時免許の発行で対応している教科がある」が31・4%と最も多かった。

代役の教員の質「選んでいられる状況ではない」6割

 代役として確保した教員の質についても聞いた。「適性のある人を評価し、採用できている」と「質を評価して選んでいられる状況ではない」のどちらが現状に近いか聞いたところ、「どちらかというと」を含めて「選んでいられる状況ではない」と答えた学校が小学校で66・1%、中学校で62・0%に上った。

 この調査は、各地の副校長、教頭に任意で回答を依頼した。教員不足で困っている人ほど積極的に回答する傾向があり、教員不足が生じている学校の比率が実際よりも高く出ている可能性もあるという。文部科学省の調査では、2021年4月時点で不足があったのは小学校で4・9%、中学校で7・0%だった。

「教員配置の充実を」 調査グループが緊急提言

 調査を実施したグループが同時に発表した緊急提言では、教員のなり手不足への対策として、学生時代に借りた国の奨学金の返済を、教員になった場合に免除する制度や、代役を担う教員の人材バンクの整備などを提案した。また、教員の長時間労働が問題となっていることを踏まえ、時短勤務ができる環境整備、週3日勤務など柔軟な働き方の実現や、各校で業務改善チームを育成することなども挙げた。

 さらに、教員1人当たりの持ちコマ数に上限を設定するといった制度改正により、教員配置を充実させることも提案した。記者会見で末冨芳・日大教授(教育行政学)は、教員不足で担任不在の学級が生じていることについて「特別支援学級でも担任不在の時間がある。不登校にもつながりかねず、子どもの危機と捉えて対策するべきだ」と指摘した。(高浜行人)…

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    武田緑
    (学校DE&Iコンサルタント)
    2023年5月19日6時27分 投稿
    【解説】

    こちらの会見、当日は出席しませんでしたが「教員不足をなくそう!緊急アクション」の構成団体であるSchool Voice Projectのメンバーとして関わっていました。去年に引き続き、年度始めの調査を行った結果、短期間であったにもかかわらず

    …続きを読む