新幹線が延びるとポテチが作れない? 札幌延伸の裏にある物流の危機

編集委員・堀篭俊材
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 新幹線が札幌まで延びると、ポテトチップスを作るジャガイモが首都圏に届かなくなる。そんな事態になるおそれがあるという。いったい何が起きているのか。

 北海道新幹線は2030年度末、札幌まで延びる。それに伴い、並行して走るJR函館線長万部―函館間約148キロが、JR北海道の経営から分離されることが決まっている。巨額の財政負担から沿線自治体は在来線を引き継ぐことに尻込みする。大半は廃線になる可能性が濃厚だ。

 ただ、廃線の影響は、周辺住民だけではすまない。特にJR貨物にとっては、会社の死活問題だ。この区間が貨物列車が走る物流の大動脈でもあるからだ。JR貨物は使用料を支払って線路を借り、列車を走らせる。

 北海道から本州に主に輸送されるのは、農産物や青果物、加工食品だ。ジャガイモやタマネギなどはその代表例で、ポテトチップスの加工用などに使われるジャガイモを1度に500トンも運ぶ臨時専用列車(通称・ジャガイモ列車)は収穫期の秋の風物詩だ。

 今後を占ううえで関係者が注目するのが、昨年11月に始まった国土交通省と北海道、JR貨物、JR北海道による4者協議だ。

 国や北海道などは存続では一致しているとされる。だが、JRから切り離された並行在来線が貨物専用線として残った例はない。

 国にしても財政負担には慎重だ。国が並行在来線に出資したケースはなく、北海道の在来線だけ特別扱いすれば他の自治体から文句が出そうだ。

 北海道の鈴木直道知事は4月28日の会見で「鉄道貨物は北海道のみならず、我が国全体の産業経済や暮らしを支える不可欠な輸送モード」と話したが、維持費の負担については「様々な課題について実務者で議論している状況」と述べるにとどまった。

 鉄道貨物をめぐる4者協議は、今年6月までに論点をまとめる方針だ。(編集委員・堀篭俊材

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