AIには不可能で、人間にしかできないこと そのために育むべきもの
経済季評 一橋大准教授・竹内幹さん
1969年6月28日未明、機動隊約300人が出動する中、新宿郵便局に郵便番号自動読みとり区分機が搬入された。機動隊は、強盗を警戒していたのではない。搬入を妨害する労働組合員に対抗するための出動だった。今からすると、郵便番号を人間が読み取り、手紙を手作業で分類するのは労力の無駄でしかない。だが、機械による自動化(オートメーション)は、ブルーカラー労働者にとって、職を奪う脅威であったのだ。
たけうち・かん 1974年生まれ。一橋大学准教授。米ミシガン大博士。研究テーマは実験経済学、行動経済学。
そして、目覚ましい発展を遂げる人工知能(AI)の登場で、ついにホワイトカラーの職も奪われる時が来たようだ。AIは、資料を読んで要約リポートを書くような業務だけでなく、写真と見分けがつかない精緻(せいち)な画像を注文に基づいて自動生成したり、コンピュータープログラムはもちろん詩を書いたりすることさえ可能になってきた。その進歩の様はSF的ですらある。ホワイトカラー労働者は連帯して、AIの普及に歯止めをかけるべきなのだろうか。
そもそも、すべての仕事がロ…
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- 【視点】
私たちにしかできないことが「責任を取る」というのは、非常に興味深い指摘です。 一昔前のテクノロジーは、開発者や設計思想を批評されることはありましたが、AIに関しては、実装したらすでに自立思考して開発者の手を離れるというイメージがあるのでし
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