「トリとロキタ」映画評論家・柳下毅一郎 狡猾な罠、「姉弟」の試練

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柳下毅一郎・映画評論家
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評・映画

 「トリとロキタ」は2人の「姉弟」の話だ。アフリカから難民としてベルギーにやってきた2人は、ビザが出るまでの不安な時間を過ごしている。正式な入国許可が得られぬために希望する仕事につけない2人は、麻薬組織の下働きをしている。非合法な仕事でもお金を稼いで、わずかでも故郷に仕送りをしなければならないのだ。だが、それが当局に知られたら即時国外退去である。合法と非合法のあいだでギリギリの綱渡りを続ける2人だったが……。

 ベルギーの名匠、ダルデンヌ兄弟の新作だ。「姉弟」役の2人はいずれも演技経験のない新人。生々しい反応を狙うダルデンヌ兄弟が起用するおなじみのキャスティングである。2人が放りこまれる世界には、彼女たちを食い物にしようと狙っている大人たちしかいない。危険な運び屋をやらせる麻薬密売人。2人から輸送費用を取り立てようとつきまとう密入国の斡旋(あっせん)業者。難民に手を差し伸べてくれるはずのベルギーの役人にも、故郷で吉報を待つ家族たちにも、本当のことをすべて話すわけにはいかない。トリとロキタが頼れる相手はどこにもいない。2人にはお互い同士しかいないのだ。

 幼い2人にとって、世界は悪…

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